オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

【オリジナル小説】魔法少女まどか☆マギカ[別編]~再臨の物語~(第1部8話)

投稿日:2017年11月11日 更新日:

 

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>>>魔法少女まどか☆マギカ 別編 再臨の物語(1-1)

 

 

学校に残ったマミは、警察や救急などひと通りの後始末を終えると、ひとり校舎の屋上へ行き校庭を見下ろした。

生徒や教師たちは警察に事情を訊かれていたり、救急に具合を見てもらうなど大騒ぎになっている。

それもそうだ。学校にいるすべての人たちが集団催眠のような症状になるなんて、聞いたこともない。

今のところ、犠牲者がひとりも出ていないのが幸いだが。

 

冷たい風が少し吹いて、マミの髪を揺らした。

「ずっと見ていたんでしょう?」

屋上には他に誰もいないはずだが

「ええ、そうよ」

マミの後ろで返事をしたのは、暁美ほむらだった。

昨夜、杏子の前にほむらが現れたのはソウルジェムを通して知っていたので別に驚きはせず、むしろマミが学校に残ったのは後始末をする為と、必ずほむらが現れると考えたからだった。

「これはあなたの仕業よね。 魔法少女のあなたが魔女を放つなんて、どういうつもり?」

マミは振り向かず校庭を見下ろしたまま訊いた。

「あなたたちには関係のないことよ」

相変わらずの返答だが、マミは続けて

「これが『グリーフシードの転生』なのかしら」

ほむらが言っていた言葉だ。もちろんマミも、あの時の杏子とほむらの話を聞いている。

転生とは、生まれ変わること。輪廻転生。

「暁美さん、あなたの言う転生とは、グリーフシードがソウルジェムへと生まれ変わることなのね」

ソウルジェムは希望によって生まれ、魔法少女の祈りを魔力に変える魂の宝珠。

グリーフシードは絶望によって生まれ、憎しみや呪いを糧にやがて魔女となる嘆きの種。

希望と絶望、祈りと嘆き、互いに対となるものだが、ふたつは別物ではない。

ソウルジェムは、やがてグリーフシードへと姿を変える魂の成長過程だ。

人間の少女が大人へと成長する生命(いのち)の摂理と同じく、ソウルジェムは成長段階の魔法少女の『生命』そのものであり
そしてグリーフシードへと成るのもまた『生命の摂理』である。その生命の摂理に従い、やがて魔女となる少女たちは魔法少女と呼ばれる。

しかし、その摂理を覆したのが円環の理、ということになる。

「だからソウルジェムもグリーフシードも、つまりは同じ魂の転換装置」

マミにこの突飛な発想が浮かんだのは、ゆう子がグリーフシードを両手に掲げている姿を見てからだった。

あのとき手にしていたのはグリーフシードだったが、その姿はまるでソウルジェムを掲げる魔法少女そのものに見えた。

「私たちは自らの魂をソウルジェムへと転換して魔法少女になった。正確にはキュゥべえに転換させられたって言ったほうが正しいんだけどね」

ほむらは表情を変えずに聞いている。

「グリーフシードのままでは孵化できないから、ソウルジェムへ転生させようというのでしょう?」

振り返ったマミは、語気を強めてほむらを見た。

「そこまでして、円環の理を歪めてまで、グリーフシードに宿る魔女の意思をこの世に再臨させようとしている、あなたの目的は何?」

「……話す必要はないわ」

ほむらは気圧されることなく、淡々と答える。

「ゆう子ちゃんや、大勢の人たちの命を危険にさらしているのよ」

「ええ、そうね」

ほむらの言葉には、感情がない。睨みつけるマミの目と、冷淡なほむらの目が向き合う。

「ゆう子ちゃんは、その媒体なのね?」

「ええ、そうよ」

…………

「そう、わかったわ」

マミはふうっと息を吐き、柔らかく優しい目に戻ると

「暁美さん、あなたは常に冷静で、無駄な争いをしない人だわ。今回の件も何か考えがあってのことなのでしょう?」

ほむらは答えない。

「でもね、覚えておいて。ひとりで考え込むのは良くないわ、あなたの悪い癖よ。あなたはひとりじゃない。何か考えがあるのなら、話してくれていいのよ」

「……余計な、お世話だわ」

ほむらが目を逸らす。

「あなたたちに話しても、意味がないことなのよ」

と言ってほむらはくるりと背を向け去っていった。

 

 

「やっぱり彼女はイレギュラーな存在だね」

マミの足元にヒョコっとキュゥべえが現れ、屋上から飛び去るほむらの背中にそう言った。

「マミも、ソウルジェムとグリーフシードの関係についてよくそこまで気付けたね。『魂の転換装置』とは、まさにそのとおりだよ」

「でも、グリーフシードからソウルジェムへの転生なんて……そんなことありえるのかしら」

「そうだね。僕も見たことはないけど、理論上は可能だと思うよ」

ソウルジェムがグリーフシードに変わるのが進化だとしたら、グリーフシードからソウルジェムに変わるのは逆の進化だ――とキュゥべえは言う。

ただし、一度穢れが溢れたグリーフシードがソウルジェムに戻ることは通常ではありえないようだが

「暁美ほむらなら、できるのかもしれない。彼女は時間を操作する能力を備えていたからね」

備えて、いた。

今はその能力は失われているはずだが。

「それと、もうひとつ。円環の理がある以上、グリーフシードだろうがソウルジェムだろうが魔女は産まれてこないはずだよ。円環の理はこの世の概念であり、覆ることのない常識であり、何人たりとも侵すことのできない宇宙の理だからね。つまり暁美ほむらは、魔女を復活させようとしているわけではないんじゃないかな」

これがキュゥべえの見解だった。

「じゃあ、暁美さんの目的は一体……」

「いずれにせよ、天生目ゆう子を媒体としてグリーフシードを転生させようとしている。さっきマミが言った、魂の転換装置としての役割をあのグリーフシードで果たそうとするなら……魔女の意思と、天生目ゆう子の魂が転換されるのかもしれない」

「それって、魔女の意思がゆう子ちゃんの肉体に宿るということ?」

「そういうことだね」

恐ろしい話だった。

円環の理があるから魔女は産まれないが、意思を宿した少女は産まれてしまうのか。

では、ゆう子はどうなってしまうのか――キュゥべえの保有する記憶にも、過去に例がないそうだ。

「でもねキュゥべえ、私には暁美さんがそんなことをしようとしているとは思えないのよ。何か他に目的があるような気がしてならないわ」

「ほむらの考えが読めないのはいつものことだね。ただ目的は何にせよ天生目ゆう子の、魔女の意思の拠り所とされる肉体とグリーフシードに閉じ込められる魂は無事では済まないはずだよ」

身体を魔女の意思に乗っ取られ、魂をグリーフシードの中に幽閉されると……魔法少女でいう身体と魂の結合が保てなくなり、天生目ゆう子という人間は消滅するかもしれない。

「とにかく、佐倉さんのところに行きましょう。きっと暁美さんも向かっているはず。そこですべてが始まるのなら、ゆう子ちゃんと暁美さんを助けなきゃね」

マミは「行くわよ」と言って歩みだし、数歩遅れてキュゥべえも小さな足を動かしながらついていく。

「それにしても、マミの洞察力には脱帽だよ。これまでの経緯でそこまで気付けるなんてさ。僕は今までにそんな話をしたことはなかったはずだからね」

「キュゥべえはいつも、大事な話は後回しだものね」

「訊かれないから、答えないだけのことだよ」

風が、またマミの髪を揺らす。

空には雲がかかり、まだ昼過ぎだというのに雲は暗く、大きく、空を覆い始めた。

「来そうね」

マミは頭上を見上げて呟いた。

 

続く

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