オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

【オリジナル小説】魔法少女まどか☆マギカ[別編]~再臨の物語~(第1部2話)

投稿日:2017年11月5日 更新日:

 

 

 

杏子の目と、暗い目が合う。

杏子は槍を構え、穂先を向けてピタリと止めた。

お互いに動かない。

1秒

2秒

3秒……

空間は歪み赤紫色の霧に包まれているが、ここはさっきゆう子と別れた十字路だったはずだ。

だが今は、さっきまで目の前にあった家や壁や街灯が霧に打ち消されてしまっている。霧は赤紫色にゆらゆらと揺れ、その先にはうっすらと緑色の大きな葉のようなものがたくさん見えた。

これは――間違いなく魔女の結界だ。

しかし、いつの間に結界に踏み込んでしまったのだろう。

いやむしろ結界の方から杏子を飲み込んできた感じだった。

(ソウルジェムの光を見てなかったけど、こんなところで突然結界が広がるなんて)

相手は両目を見開きこちらを凝視しているが、動く気配がない。

今までは霧のせいで気付かなかったが、よく見ると両目の周りにうっすらと輪郭があるような気がする。赤茶色っぽい卵型のような楕円形の、イチジクの実に目が付いているような、そんな感じだった。

手足はない。

暗い目が付いた大きなイチジクの実だけが宙に浮き、こちらを見ているのだった。

(落ち着け)

杏子は冷静に考える。

(さっきの動きを見ると、あいつはかなり速い。まばたきで消えたり現れたりしてるみたいだ)

さすが実戦経験が豊富な魔法少女だけに、相手の動きを的確に分析する。

たった2度の動作から、なぜ自分の攻撃が当たらなかったのかと、どうすれば当てられるかを判断する。

1秒

2秒

3秒……

(速さは、あたしより上かもしれない)

それからチラっと八重歯をのぞかせ

(でも)

軽く息を吸って

だっ!

とイチジクに向かって飛び込み、真正面から槍でするどい突きを繰り出した。

槍の穂先がイチジクに触れるか触れないかその時、イチジクはやはり目を閉じて姿を消す。

しかし実はこの突きはフェイクで、杏子は槍を多節棍のように細かく分断し、鞭にようにしならせ自身の四方八方を変則的に巻き打った。

イチジクは再び目を開けて今度は杏子の背後に現れたが、杏子の周囲を舞う多節棍の弾きによって激しく打ちひしがれ、そのまま声にならないような悲鳴をあげて萎んでしまった。

イチジクは見えている攻撃を避ける時、必ず目を閉じて姿を消す。

そして再び杏子の近くに現れるが、どこに現れるかわからないので、四方八方をいっぺんに粉砕できる攻撃を繰り出したのだった。

魔女退治には数か月のブランクがあったが、杏子の戦闘センスは衰えていない。

「余裕っしょ」

多節棍のように分断されている槍を元の状態に戻しクルクルと廻し肩に背負ってから周囲を見回すと、赤紫色の霧は晴れ、もとの十字路に変わっていった。

そこはゆう子と別れた後の、何でもないただの住宅街の十字路に戻った。

「どういうことだ?」

魔女を倒せば落とすはずのグリーフシードが、どこにもない。魔女はグリーフシードを落とすはずだが

「さっきのヤツは、魔女じゃなくて使い魔だったのか」

使い魔はグリーフシードを落とさないからそれなら納得がいくが、どうして急に結界の中に入ってしまったのかは分からなかった。

入ったと言うよりも、引きずり込まれたと言うべきだが。

 

「とりあえず、マミに連絡しておくか」

出発の時にマミから渡された携帯電話を取り出し、慣れない手つきで通話ボタンを押す。

トゥルルル

トゥル……

『はい、こちらは魔法少女部部長の巴マミよ❤︎』

「!? ……おいマミ! 何でそれ!?」

杏子の顔が一気に赤くなる。

『うふふ、ごめんなさいね。実は私のソウルジェムを通して、佐倉さんの状況を見ていたのよ』

「え、何だって? ソウルジェムでそんなことができるのか?」

ソウルジェムにそんな能力があるなんて、今まで聞いたことがない。

『私から一方的に見たり聞こえたりするだけなんだけどね』

(つまり、あたしは監視されてたってことか?)

杏子は露骨に嫌そうな顔をした。

『まあ魔法少女部の話は置いておいて……』

(本当に置いといてくれよな)

マミがソウルジェムを通して杏子の様子を見ていてわかったことは、結界が存在し使い魔が現れているから、やはり魔女はいる。

ソウルジェムは魔女の結界に反応して微弱な光を発しているが、方向を示そうとしないので結界の場所が特定できない。しかし、先ほど杏子が引きずり込まれたように、結界自体は存在している。

『ここからは私の推測なんだけど……』

とマミは前置いて

『まだ魔女が孵化していないグリーフシードがどこかにあるんじゃないかしら。円環の理によって、魔法少女が魔女になってしまうことはなくなったわよね。それと、人間の憎しみや呪いによって魔女が産まれることもなくなっているのだから……』

「それでも魔女がいるってんだから、おかしな話なんじゃないか」

杏子の言うことはもっともだ。

『そう。でも、魔女はいなくてもどこかにグリーフシードがあって、憎しみや呪いを吸っている。憎しみや呪いが溢れれば孵化して魔女が現れるんだけど、円環の理によって孵化できない。だから本来なら孵化しているはずの魔女が、実体ではなくグリーフシードの中に意思として存在しているんじゃないかと思うの』

魔女の意思?

「意思だけのくせに、結界を張ったり使い魔を動かすことができるっていうのか?」

『確証はないけど、もしかしたら……』

マミの声が少し低くなる。

『円環の理が、捻じ曲げられようとしているのかもしれないわね』

魔女の意思が、あるいは他の何かが、円環の理を歪めようとしている。

いや、結界や使い魔が存在しているのだから、すでに歪んでいるのかもしれない。

『それから、さっきの使い魔。 あれはイチジクの実だったわね。さしずめ魔女本体は、無花果(イチジク)の魔女ってところかしら。イチジクが意味するのは』

マミは少し言葉を切って

――再臨

『この世の終わりに再び現れる魔女と考えたら、無花果の魔女っていう名前も頷けるわね』

 

続く

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