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【オリジナル小説】魔法少女まどか☆マギカ[別編]~再臨の物語~(第1部11話)

投稿日:2017年11月14日 更新日:

 

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>>>魔法少女まどか☆マギカ 別編 再臨の物語(1-1)

 

無花果の大樹の中心では、黒い光がゆう子とグリーフシードを包んでいる。

使い魔たちは大樹の周りで宙に浮いたままこちらに向かってこないようだった。

キュゥべえは語りかけた。

『天生目ゆう子、君はグリーフシードの転生に選ばれたようだね。これは暁美ほむらの意思か、魔女の意思か、それとも円環の理の意思か。とにかく、今から大事な決断をしなければならないんだ。わかるかい?』

声はゆう子に向けられているが、杏子にもマミにもほむらの頭の中にも伝わってくる。

『間もなく君の持つグリーフシードは、魂の転換機能によって君の魂の転移を始めるんだ。この転移が完了すれば、君は魔女の魂と共に円環の理によって消滅することになる。それもひとつの君の運命だ。でも、滅びだけが君の運命じゃない。そのグリーフシードをソウルジェムへと転生させて生き延びるという道もある。それには・・・』

ここまでのキュゥべえの語りに、ほむらは顔色ひとつ変えずに聞いている。

しかし杏子はここで初めてグリーフシードのソウルジェムへの転生の意味に気付いた。

「キュゥべえ、まさか!」

『僕と契約して、魔法少女になるんだ』

「ダメだ! なんでゆう子が魔法少女になんて!」

しかし杏子の声にキュゥべえは反応しない。キュゥべえは高度な念話技術で、ゆう子の魂と直接会話をしていた。

杏子たちに聞こえているのは、キュゥべえが一方通行で送りつけているテレパシーだけだった。

(魔法……少女?)

『本来なら、円環の理によって相転移エネルギーの発生が抑制されてしまったこの世界で、新たに魔法少女を生み出すなんて、僕には何のメリットもない話なんだけどね。今回はあそこにいる暁美ほむらが起こしたイレギュラーだから仕方がない。それより、このイレギュラーの結末を見届ける価値はありそうだからね』

(あの人、私の夢に出てきた人だ)

『そう、彼女も魔法少女だ。君の友達の佐倉杏子と、もう一人の巴マミも魔法少女だよ』

(杏子ちゃんも?)

『そして魔法少女となる代わりに、僕がどんな願いでもひとつだけ叶えてあげる。お金でも地位でも名誉でも、君が望む願いを何でも叶えてあげられるよ。杏子たちもそうして魔法少女になったんだ。ただし、一度 魔法少女となってしまったら二度と戻れないけどね』

(どん・願い・も叶うんだ)

声に、ノイズが入った。

『このまま魔女と共に円環の理によって消滅するか、それとも僕と契約して魔法少女になるか――君には選ぶ権利ある。でも、あまり考えている時間はなさそうだね。君の魂はすでに身体を離れグリーフシードへと転移し始めている。

『安息の消滅か、窮愁の生か。さあ、選ぶといい』

(わ・た・し……は)

キュゥべえだけには、魂としての天生目ゆう子の姿が見えているが

ザッ

ザザーッ

っとノイズが強くなる。

電波の悪い交信のように乱れが生じ、ゆう子の姿も声も途切れ途切れになっていく。

「他に、他にゆう子を助ける方法はないのかよ。どうしてゆう子が魔法少女にならなきゃいけないんだ! あいつは今すごく頑張ってるんだ。 勉強と部活を、両親に認めてもらおうと。そんな希望に満ちたゆう子の人生を狂わせる魔法少女なんて……なんであたしたちみたいな運命を背負う必要があるんだ!?」

杏子は必死に問いかけるが、マミもほむらも静かに無花果の大樹とグリーフシードの転生を見守っている。

「残念だけど、すでにあの子の魂は身体を離れているわ。もし今、彼女からグリーフシードを取り上げたら天生目ゆう子は二度と目を覚ますことはなくなる。もう、他に選択肢はないのよ」

「そんな……」

『生きる道はひとつしかない』

安息の消滅か、窮愁の生か。

誰も死は望まないだろうが、生き残ることもまた辛く苦しい過酷な運命の選択。

あとはゆう子の魂がキュゥべえに願いを伝えれば、窮愁な魔法少女として生きる道が残される。

『さあ、願いを言うんだ。 早く!』

その時、魔女の結界内に異変が起きた。

大きな地鳴りと共に周囲の至る所に白い亀裂が入る。結界を形成する半球体の頭上、足元、そこら中に大小無数の傷口が開くと
無花果の大樹から甲高い悲鳴のような、人のものとは思えない叫び声が響き渡った。

すると、今まで大樹の周りから動かなかった使い魔たちが突然、我を忘れたかのように大樹の中心、ゆう子とグリーフシードを覆う幹に向かって一斉に体当たりを始める。

頑丈な幹に容赦なく捨て身のような体当たりをし、使い魔たちは次々と力尽きていった。

「な、何をしているんだ?」

いくら使い魔とはいえ、自らの命を捨ててまで何をしようとしているのか。

理解を超えた行動に戸惑う杏子だが、キュゥべえはすぐにこの異変が何なのかを簡潔に説明した。

「円環の理が発動したみたいだね」

魔女の魂がグリーフシードを離れたのだ。

つまり、この世に産まれるはずのない、産まれてはいけない魔女に対し円環の理が発動し魔女の消滅が始まる。

魔女の魂が消滅すれば、使い魔も、魔女の結界も一緒に消滅するのだろう。使い魔たちは消滅を阻もうと、ゆう子とグリーフシードの干渉を命がけで止めようとしているのだった。

「まずいね。あの子の魂はすでにグリーフシードの中に入った。今、使い魔たちにグリーフシードを奪われたら、二度と戻ることはできないよ」

「マミ!」

「ええ!」

キュゥべえの言葉を聞いて、杏子とマミは瞬時に使い魔の群れの中に飛び込んでいった。

使い魔たちは外敵の接近に反応して、今度は一斉にふたりに襲いかかる。

この広い空間であれだけの数に囲まれたら苦しい戦いになるのは承知だが、もうそれどころではない。

先にマミが遠距離からマスケット銃を一発撃ち放つと、先頭にいた使い魔はまばたきで姿を消す。

が、弾丸はそのまま突き進み、すぐ後ろにいる使い魔を一匹仕留めた。

まばたきで姿を消した使い魔がマミの目の前に出現したところを、横から杏子が槍を振り上げこれも仕留める。

あとはふたりと無数の使い魔が入り乱れた乱戦になった。

マミは遠距離からマスケット銃を撃ち、近づいてきた使い魔は杏子が攻撃する。見事な連携で数十匹、数百匹と使い魔を倒していく。

が、数で圧倒的に勝る使い魔たちにどんどん間合いを詰められ、ふたりは防戦一方になってしまった。

マミのマスケット銃では一度に何匹も倒せないし、杏子も防御に徹していては懐に入ってくる使い魔に当てるのが精いっぱいだった。

とうとう一匹の使い魔が杏子の背中に体当たりを当てるとふたりの連携は崩れ、あとは押し寄る雪崩のような攻撃を防ぐことができなくなる。

杏子もマミもあっという間に使い魔に押し潰されてしまった。

今度はほむらも助けに来ない。

助けるどころか、さっきから立ったまま動いていなかった。

そしてこの戦いの間キュゥべえも動かず、ずっとゆう子の魂と向き合っている。

『天生目ゆう子、見えているだろう? このままではグリーフシードの転生が完了する前に、君も、杏子たちも、この魔女の結界ごと円環の理に導かれて消滅することになるだろう。君の魂はすでにグリーフシードに囚われているけど、まだ意識だけは残っているはずだよ』

(消えちゃうの? 私も、杏子ちゃんも?)

『そうさ。円環の理が絶対である以上はね。理不尽だと思うかい? 何の罪もない君まで巻き添えになるのが』

(私よりもみんなが、杏子ちゃんが消えてしまうなんて、そんなのダメだよ)

『杏子たちは使い魔に潰されて動けないでいるからね。暁美ほむらも、今は助けたくても助けられない。ふたりともあの状態では、ここから脱出することはできないだろう』

(私のせいでこんなことになっちゃったんだよね)

『君がグリーフシードを受け取ったことかい? だからこそ君は杏子に出会えたんだ。夢の中で暁美ほむらに渡されたグリーフシードが、君と杏子を繋ぐきっかけになったんだよ。その結末がどうなるかは、君の決断にかかっているわけだ』

(結末……って、消滅か、生か?)

『君も、杏子たちもね』

(杏子ちゃんを助けられないの?)

『今の君の魂はグリーフシードの中にある。本来、魔法少女というのは自らの魂をソウルジェムへと変えてなるものだけど、希望という名の君の願いをグリーフシードの転生に充て、魔法少女としての君の力で杏子たちを助けることができれば、みんなこの魔女の結界から脱出することができる』

(私が、杏子ちゃんを助けられるの?)

『そうさ。今、杏子たちを助けられるのは君だけなんだよ』

 

 

『さあ、願い事を言ってごらん。君は、どんな願いで魂の宝珠を輝かせるんだい?』

 

 

(私の願いは)

 

 

 

 

「杏子ちゃんと、お友達でいたい!」

 

―――契約は成立だ

 

続く

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