オリジナル小説

【オリジナル小説】魔法少女まどか☆マギカ[別編]~再臨の物語~(第1部最終話)

投稿日:2017年11月17日 更新日:

 

【魔法少女まどか☆マギカ 別編 再臨の物語】を最初から読んでくださる方は
>>>魔法少女まどか☆マギカ 別編 再臨の物語(1-1)

 

激しく吹き飛ばされたふたりは工場の塀に衝突し、そのまま倒れ込む。

物質が固定されているため、割れることのない塀に打ち付けられたふたりのダメージは相当に大きい。

普通の人間なら今の一撃で即死する程の衝撃だが、魔法少女である彼女たちは魂の宝珠であるソウルジェムを本体としているので
ソウルジェムを傷付けられない限り、外付けのハードウェアでしかない身体の損傷は致命傷にはならない。

致命傷にはならないが、あまりに強力な衝撃で身体の損壊が激しく、魔力による肉体修復がすぐには追いつかない。

「杏子ちゃん、平気!?」

ゆう子が振り向き慌てて声を掛けるが、今度は魔獣がゆう子の声に反応し飛び掛かってくる。

「ゆう子逃げろ!」

魔獣の爪がゆう子の身体を引き裂いた――かのように見えたが

「大丈夫!」

ゆう子はまばたきで姿を消し、一瞬で魔獣の背後を取った。

「私も戦えるよ!」

と言って、短槍で魔獣の背中を斬りつけた。

槍が長くないから扱いが容易で、しかも攻撃速度が速い。

魔獣は斬撃のダメージに叫び声をあげるが、振り向きざまに鋭い牙をむき出し、ゆう子に喰らいつこうとした。

が、ゆう子は視界に入る攻撃を瞬間移動で難なく躱し、魔獣の肩に生える双頭、四肢、背中に何度も斬撃を浴びせる。短い武器の特性上、大きなダメージは与えられないが、着実に魔獣の体力を削っているように見えた。

しかし、魔獣も徐々にゆう子の動きに適応し始める。

ゆう子が姿を消すタイミングを計るように初撃の動作を小さくし、斬撃を受けながらも反撃の機会を狙っているようだった。

そして遂に、ゆう子が背後に現れた瞬間に、固く尖った鋭い尾でゆう子の肩口を切り裂いた。

「きゃっ!」

っと跳ね飛ばされたゆう子を、ほむらが空中で抱きかかえて着地した。

右肩から横腹にかけて創傷を負っているがソウルジェムは無事。致命傷ではないが、ゆう子は痛みのショックで気を失い魔法少女の姿も解けてしまっていた。

魔獣は再び雄叫びをあげ、ほむらに視線を向ける。

「マズい、ゆう子を抱えたままじゃ戦えないぞ」

ようやっと起き上がった杏子は、肉体の修復が完全ではないながらも槍を構えてほむらの加勢に出た。

マミもマスケット銃を数発撃ち、魔獣の注意を引き付ける。

銃弾は魔獣の身体に当たるが、かすり傷程のダメージしか負わせていないようだった。

それでも魔獣の攻撃対象はほむらから杏子へと移り、巨体が繰り出す爪や牙の攻撃と杏子の槍が激しく打ち合う。

魔獣の攻撃を正面から受け止めると力の差で弾き飛ばされてしまうので、杏子は魔獣の打撃を受け流すように槍で捌いていく。

その槍捌きは杏子の戦闘センスが際立つところだが、どうしても防戦気味になってしまい、なかなか攻撃を与える機会がない。

それでも今、近接戦闘で魔獣を相手できるのは杏子だけなので、何か攻撃手段が閃くまでの時間稼ぎと言えなくもなかった。

杏子が接近して打ち合い、マミがマスケット銃で遠距離から援護射撃をする。

ふたりの連携の取れたコンビネーションで手数は稼げているが、魔獣にダメージはほとんど与えられない。

(佐倉さん、そのまま注意を引き付けておいて)

マミが杏子にテレパシーを送る。

(それはいいけど、これじゃアイツに攻撃できないんだって)

杏子も余裕がない。

(暁美さん、あなた盾を失って何か別の攻撃手段はないの?)

今度はほむらにテレパシーで問いかける。

(ないこともないわ。でも今の私の状態では一度だけ、一発だけね)

気を失っているゆう子を工場の塀の裏に隠し、ほむらが返してきた。

(それは、あの魔獣に効くのかしら)

(やってみなければわからないわ)

マミとほむらのテレパシーのやりとりの間で、杏子の形勢が押され始める。

魔獣の攻撃をまともに喰らうことはないが、容赦ない力任せの攻撃に疲れが見え始めている。

「それじゃ、一度だけのチャンス、暁美さんに懸けてみるわよ」

マミは力強く言い放つとマスケット銃を大量に出現させ

「佐倉さん、避けて!」

と叫び、魔獣に向けて一斉射撃を浴びせた。

無数の銃弾で魔獣を怯ませると、そこへさらに

「ティロ……フィナーレ!!」

轟音と共に強大な砲撃を放つ。

しかし、マミの強力無比の攻撃を魔獣は間一髪で飛び跳ね、空中へと逃れる。砲撃はホップしながら建物を逸れて空の彼方へ消えていった。

魔獣は飛び跳ねた勢いでそのままマミに向かって飛来してくる。鋭い牙を剥き、大きな爪を振り上げ、その巨体でマミを目がけて襲いかかってくるが、マミは避ける素振りも見せずほむらに合図を送る。

「暁美さん!」

ほむらは素早くマミの前に来ると、見たこともない漆黒の弓を手に構えた。

そこに淡いピンク色に発光する矢を番え、キリキリと引き絞ってから飛来する魔獣に向けて射放つ。

矢は淡いピンク色の尾を引きながら巨体を貫くと、魔獣はその軌道に渦巻かれながら跡形もなく消滅してしまった。

魔獣を貫いた矢はそのままの軌跡を持って天高く走り抜け、暗く厚い雲を引き裂いて見えなくなった。

「今のは!?」

杏子もマミも、巨大な魔獣を一瞬で消滅させた今の一撃は見たことがないものだった。

ほむらは今まで銃火器を使った攻撃を得意としていたし、他の武器を使うことはなかったから、それは驚くべき一撃だった。

あの巨獣をいとも簡単に仕留めたほむらの魔法の弓矢を見て杏子は

「ほむら!」

と満面の笑みで走ってほむらに近づき、力いっぱい抱きついて喜びをぶつけた。

「何ださっきの? すげえじゃねーか」

「ちょっと、離れて頂戴」

ほむらは相変わらずツンケンした表情で杏子を突き離した。

それは杏子を鬱陶しく見ているようでもあり、照れているようでもあったが、本人は嬉しそうな素振りを見せる事なく

「時が、流れ始めたわ」

と言って辺りを眺める。

街路樹から垂れた雨水が、路面の水たまりにポタっと落ちて波紋を浮かべる。柔らかい風が吹き、辺りの草木を揺らす。

固まっていた時間は魔獣の消滅と共に解放されたようだった。

人々の生活が動き出し、労働は街を活気づけ、鳥や虫は生命の息吹を感じさせた。

「暁美さん、あなたにそんな能力があったなんて知らなかったわ」

マミも戦いの緊張感を解き、ほむらに近づく。

「そうね、私もこの弓矢を使うのは今回が初めて。元々、私の魔法能力は時間操作だけ――今までは戦いの役に立つ魔法がない分、銃火器を使用していたのだけれど、あの盾はもう無くなってしまったから……」

「でも、その弓矢はどこかで見たことがある気がするのだけど……」

「そう? きっと気のせいね」

再びツンとした態度に戻る。

「それにしても、魔女の魂が自我を捨て魔獣になるなんて、聞いたことがないわ。キュゥべえは知っているような感じだったけど……」

「生命の摂理を鑑みれば、不思議な話ではないわね。すべての生き物は死に直面したとき、どんなことをしても生きようとする道を探す。あなただってそうして魔法少女になったんでしょう?」

ほむらの話は的を射ていた。

円環の理によって消滅させられるのなら、魔力や意思を捨ててでも生きようとする。瀕死の状態に陥れば、どんな条件でも受け入れて生きる道を選ぶ。

それが生あるものの理かもしれない。

「円環の理を歪めたのは、生命の理というわけね」

「そして、これが再臨の始まり」

最後のほむらのひと言は声が小さくて、マミには聞き取れなかった。

ふたりの話をきいていた杏子が

「そうだ、ゆう子!」

急いで工場の塀の裏にもたれかかっているゆう子のもとに行き傷口を見ると、幸いにも軽傷なようで、すでに魔力による肉体修復が済んでいた。

しかし身体に大きな裂傷を負ったことによるショックからか気を失って目を覚まさないでいる。

「ゆう子、しっかりしろ」

杏子が呼びかけるが、返事もなく深く眠ってしまっているようだった。

無理もない、と杏子は思った。

今日、学校での出来事から今まで、どれだけ非日常的なことがあったか。身体も心も疲れ切ってしまったのだろう。

杏子はやれやれといった感じで自らの魔法少女の姿を解くと、ゆう子の隣に座り込んだ。

「目を覚ますまで、一緒に居てやるよ」

それを見たマミはニコっと微笑んでから

「私たちはこのまま見滝原に戻るわね。向こうのグリーフシードを放置しておくわけにはいかないから。 ね、暁美さん」

ほむらに同行するよう促した。

もともとマミが探知したグリーフシードはふたつ。

ひとつはこの六千石町で天生目ゆう子に託されたグリーフシード。もうひとつは見滝原市にあり、まだ所在を掴めていない。

「あら、もうひとつも私が仕組んだと思っているのかしら」

「そんなことは言ってないわよ。 ただ、今度はもっと簡単に見つけられるといいんだけどね」

マミは見滝原へ向かうバスの時刻表を眺めてから、少し真剣な眼差しで

「私たちは魔法少女だもの。使命を全うしなきゃ」

自分に言い聞かせるように呟きながら、バス停のベンチに腰掛けた。

それを聞いたほむらは

「運命に翻弄されるのはご免だわ」

否定的とも聞こえる言葉を出しながら、マミの隣に座った。

魔法少女は、魔なる者と戦うために存在する。

それを自らの使命と受け止めて生きていこうとするマミと、運命に弄ばれながらも必死に抗おうと生きるほむらは対照的だった。

が、杏子の考え方はそのどちらでもない。

今は魔法少女として生きることになってしまったゆう子を放ってはおけない――ただそれだけだった。

杏子はまだ目を覚まさないゆう子に肩を寄せ、空を見上げながら話しかけた。

「……ったく、魔法少女になっちまったのは仕方ないけどさ」

――――(杏子ちゃんと、お友達でいたい)

「そんなこと、願っても願わなくても同じことじゃんか」

呆れるように、でも心の中では嬉しくてたまらないといった表情で

「たった一度の奇跡のチャンス、もっとマシな願いはなかったのかよ」

もったいねえな、と言いたげに隣を見ると、うつむいたままのゆう子が目を開け

「ご、ごめんね杏子ちゃん」

恥ずかしそうに顔を隠して答えた。

その気になれば大金でも地位でも名誉でも、思いのままに願いを叶えることができたはずなのに。

「よお、起きたかい。でもあの時は考えてる時間もなかったからなぁ」

杏子はいつから隠し持っていたのか

【ROCKY】

と書かれたお菓子を取り出し、ペリペリっと封を開けると

「食うかい?」

と言ってゆう子に差し出した。

 

第1部 完

ブログランキング・にほんブログ村へ









-オリジナル小説

Copyright© アニもに! , 2019 AllRights Reserved.