オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

【まどマギ小説】魔法少女まどか☆マギカ 別編~再臨の物語~(2-24)

投稿日:2018年6月4日 更新日:

再臨ロゴ2

 

くるみの無限の魔力は尽きない。吹き飛ばされた肩先は、魔力による肉体修復で異形の変化を遂げた。再生された腕の先には無数の黒いトゲが生え、1本1本がマミの身体と同じくらいありそうな長さの、針のような細長いトゲが構えられた。

くるみは身体の一部を物質へと変化させた。それは魔法少女の能力を超越した、極めて異質な肉体の構造変化。数えきれないほどの黒いトゲが、風切りの音を立ててマミに向かって放たれた。

マミが魔力のコントロールによって効率よく無駄のない攻防をするのとは対照的に、くるみは限界のない魔力を駆使して広範囲と高威力の手数で攻め立てた。マミは迫るトゲをマスケット銃で撃ち落とすが、数が多すぎる。単発撃ちのマスケット銃ではとても防ぎきれなかった。

「まるで針千本ね」

数時間前の別れ際に交わした約束を、覚えているのだろうか。

「でも、私は来たわよ。くるみちゃん」

マミの魔力が、強く開放された。マミの立つリボンの足場に魔法陣が敷かれ、淡い光の壁となって周囲を覆う。それは何者にも侵されない絶対領域。迫りくる無数のトゲは、光の壁に阻まれ音もなく消えていった。小さな魔法結界のような魔力の壁は、相手の攻撃を弾き返すものではなかった。マミに降り注ぐトゲが、まるで無力化されるように結界の壁の前にかき消された。

「悲しみも憎しみも絶望も、もっと私にぶつけて来なさい!」

魔法結界に囲まれたマミの身体が、オレンジ色の光を纏った。マミはすべての魔力を開放している。リボンによる拘束魔法や、強力無比な大砲(ティロ・フィナーレ)とは比べものにならない強い魔力だった。

くるみの放つトゲの数が増す。螺旋階段の部屋を真っ黒に覆いつくすほどのトゲが宙を舞い、渦を巻き、数千本もの黒い嵐がマミを襲った。まるで竜巻が降り注ぐように、くるみの悲しみ・憎しみ・絶望が螺旋に巻かれてマミにぶつけられる。

「どうしたの? あなたの苦しみはこの程度? 今まで溜め続けてきた絶望で、無限の魔力で、私を押し潰してみなさい!」

くるみはその巨体をフワっと宙に浮かせ、失った片腕を再生させた。両手を巨大化させ、尖った指先を開き、腕を広げると、マミの左右から両手で挟み潰そうとした。巨大な黒い手が、無限の魔力でマミを挟み込む。

しかし、これもマミの魔法結界を打ち破ることはできなかった。巨大な黒い両手は光の壁に阻まれ、マミの身体に触れることすらできない。結界の表面にバチバチと黒い稲妻を走らせながら力いっぱい押し潰そうとするが、光の壁はビクともしなかった。くるみの黒い稲妻がどんどん勢いを増し、マミの結界に乱反射してそこら中に飛び散った。

すべてはくるみの負の感情。膨大な穢れが魔力に乗せて放たれている。しかし、どんな攻撃もマミの魔法結界の前に無力化された。くるみの悲しみも憎しみも絶望も、マミの光の壁を傷付けることはできなかった。

『おいマミ、魔力を使いすぎだぞ! ソウルジェムを見てみろ、少し抑えないと穢れが……』

杏子の思念がマミの頭で叫んできた。

「大丈夫、まだ平気よ。ちゃんとコントロールできているわ」

『そうじゃなくて! もうグリーフシードは無いんだ、穢れを浄化できないんだぞ』

「そうね。くるみちゃんのソウルジェムはグリーフシードに成らない。彼女はいつまでも……弱い魔法少女だものね」

『何を言ってるんだ!? このままじゃアイツが円環の理で救済される前に、自分が先にくたばっちまうんだぞ』

マミの髪飾りにあるソウルジェムは、黒く深い濁りをゆらゆらと揺らしていた。ゆらめく穢れの波紋はまるで生きているようにうねり、混ざり、ソウルジェムを染めていた。しかしマミの表情は優しく柔らかだった。激戦の中で強大な魔力とぶつかり合いながら、くるみの負の感情を受け止めている。すべての魔力を解き放ち、ソウルジェムを穢し、くるみの絶望を救おうとしていた。

「……佐倉さん」

マミは穏やかな顔で杏子の思念に語りかけた。

「いつだったか、私に聞いてきたことがあったわよね」

杏子は未だ目覚めぬままマミのソウルジェムの中に取り込まれているが、ふたりの思念だけが波長を合わせ、魂と魂で会話をしていた。

「どうして他人の為に危険を冒して魔女と戦うのか」

『あ、ああ。昔の話だろ? こんな時に何だよ』

「私は死の寸前でキュゥべえと契約して魔法少女になったわ。あと数分遅ければ息絶えていた時に願いを告げたのよ。……生きたいって」

マミはかつて、交通事故で瀕死の重傷を負い、生きるか死ぬかの瀬戸際に願いを告げ魔法少女になっていた。生きるための選択は魔法少女になるしかなかった。自らの命を繋ぎとめる願いは成就され、命を繋ぐ=リボンを繋ぐ能力を身に付けた。

「あの時の死の恐怖は忘れられないわ。死ぬっていう感覚は、傷を負ったり血を流したりする傷みよりも、自分が消えてなくなるっていう恐さに襲われるの。あんな思いは2度としたくないわ」

『そりゃ誰だってそうだろ』

「ええ。だから、魔女の呪いによって死の恐怖に包まれる人を救わなければならない。これがあの恐さを味わった私にしかできない、私の正義だと思ったの」

マミと杏子の思念が会話を交わす中、くるみの魔力が両腕に集まった。壮絶な地鳴りを響かせ、身体中から黒い穢れを発し、マミの結界を押し潰そうとする。が、すべての力を無力化する絶対領域はビクともせず、結界の中では静かにふたりの会話が続いていた。

『だからって、罪のない大勢の魔法少女を殺してきたアイツを救うことはないじゃないか』

「確かにくるみちゃんは殺し過ぎたけど、彼女の生き死にを決めるのは私じゃないわ。私にできることはくるみちゃんの絶望を救うこと。今までも、目の前の傷ついた人を救ってきた。だから、今の私があるの」

『今のマミって、マミはマミだろ?』

「そう、私は私。魔女と戦い、呪いを退け、絶望に抗い、魔法少女の使命を全うしてきたのが私。あなたと出会い、暁美さんや美樹さんと出会い、ゆう子ちゃんと出会い、大切な仲間を得られたのが私。今まで私のしてきたことがかけがえのない幸せに繋がったのだから、ここでくるみちゃんを見捨ててしまったら私じゃなくなっちゃうわ」

運命に従い、魔法少女の使命を全うし、孤独と戦い続けたマミが得た最高の幸せは、まさに今だった。マミはニコっと笑った。

「いい?佐倉さん。強さを振りかざすのは弱者のすること。弱き者を救うのが正しい魔法少女なのよ。あの時はケンカ別れであなたとのコンビは解消しちゃったけど、あなたはまだ私の弟子なんだから。そしてこれが、あなたへの最後の教えよ。覚えておいてね」

マミのソウルジェムが黒く揺れる。穢れが限界を超え、魂の宝珠が黒く輝き始めた。

 

続く

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