オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

【まどマギ小説】魔法少女まどか☆マギカ 別編~再臨の物語~(2-22)

投稿日:2018年5月21日 更新日:

再臨ロゴ2

 

『もう遅いんだよ』

くるみは両手に魔力を集中し、黒いギザギザな指先を長く伸ばした。ほむらの言っていた、魔力で肉体構造を変化させる魔法だ。

『わたしたちはもう何年も、こうして魔法少女を殺してきたの。殺して、殺して、殺して、ソウルジェムを喰らいつくしてきたの。わたしたちの魂にどれだけの因果があるかわかる? 魔法少女が背負う因果を、何十人何百人と飲み込んできたくるみの身体が、どれだけ黒く染まっているか見える?』

黒よりも黒いくるみの身体。その中に煌めく無数の小さな光は、今まで殺してきた魔法少女の命の数なのか。

『くるみが向かう負の感情の頂点は、この階段と一緒。どこまでも続く螺旋の迷宮。一度上りだしたら、もう下は見えないんだよ』

くるみの指先がマミを襲う。長く伸びた指を鋭利な刃物のように突き刺してきた。それをマミは紙一重ですり抜けると両手にマスケット銃を構え、くるみの肩を狙い撃った。銃弾はくるみの肩を貫通し、黒い液体がほとばしる。

『痛くないよ』

飛び散った黒い液体はくるみの血液か。大勢の魔法少女を殺し、そのソウルジェムを喰いつくしてきたくるみが背負う因果は、身体も心も、血液までも黒く染めている。

「螺旋の迷宮を後戻りできないんじゃないわ。あなたは戻りたくないと思っている。魂は穢れに苛まれ、絶対的な力に魅入られ、絶望の道しか見えなくなっているだけよ」

負の感情エネルギーが理性を凌駕してしまい、視野が狭くなっている。目の前の一点しか見えていない。踏み外した道を歩み続け、それが正しいと思い込み、後戻りも回り道も拒絶している。

『戻れないんじゃない。戻らないんじゃない。お姉さんは間違ってる』

くるみは両手を挟んでマミを捕まえようとした。長く伸びた指が絡められマミを覆いつくすが、マスケット銃の連射でくるみの指が弾け飛んだ。マミはその隙間から飛び上がり階段の手すりに乗り上げると、階段の外側の空間に大量のリボンを張り巡らせ足場を作った。フワっと宙に浮き、張り巡らせたリボンの足場に着地すると

「くるみちゃん、こっちに来てみなさい」

と言ってくるみを誘った。くるみは階段から素早く飛び出し、リボンの足場を伝ってマミの頭上に止まった。

「どう? 狭い階段の中と、広い階段の外からでは、見える世界が違うでしょう?」

螺旋階段の頂上は暗くて見えないが、マミが入ってきた入り口にある非常灯の明かりで、「出口」と書かれた扉が見えている。

「あそこから、もう一度やり直すことだってできるのよ」

マミはくるみを救いたいと思った。

希望を祈り魔法少女へと転身した少女たちは、決して幸せではない。過酷な運命を背負い、魔女との戦いに身を置き、ソウルジェムを掲げ、やがて滅びゆく存在。願いを叶える奇跡の代償はあまりに大きく、待ち受けるのは絶望しかない。しかしソウルジェムが輝く限り、絶望から希望へと転移する正の感情エネルギーは幸せな夢を与えてくれる。マミには、そうして今がある。

魔法少女には、奇跡も魔法もある。

くるみは動かない。マミの言葉が届いているのか、リボンの足場で静かに螺旋階段を見ていた。ぐるぐると、いびつなうねりでそびえ立つ螺旋階段。くるみの傷口から、黒い穢れのようなモヤがもうもうと立ち上っていた。

黒いモヤがくるみの身体を包み込むと、再び殺気が込められた。弾け飛んだ指を瞬時に再生させると、両手を巨大化させ腕を伸ばしてマミに振り下ろしてきた。マミは一旦身体を屈め、リボンの反動でジャンプして頭上のリボンを掴みくるりと回転した。くるみの腕はマミを追跡するように後を追い、背中を掻き切るように一閃してくる。マミは足場のリボンを伝い渡って攻撃を躱した。

「くるみちゃん!」

『くるみの穢れと絶望、悲しみは何者にも染められない無限の黒。その負の感情をすべて受け入れるのがくるみの願い。お姉さんの言っていることは間違ってるの。お姉さんと話していると気分が悪い』

くるみはリボンの足場を鋭い指先で掻き切って螺旋階段に飛び移り、小さな身体に魔力を込め手足を長く伸ばした。そびえる螺旋階段に片腕を回すと、しがみ付くように抱え込み、さらに身体までも巨大化させた。溢れる魔力はどんな魔法も可能にしている。身体の伸縮、構造の変化、肉体修復、限界のない魔法の力は無限の黒を謳ったくるみの願いそのもの。

『この螺旋階段の行きつく先に、わたしたちの未来があるの。わたしたちが辿り着く場所なの。死して悪魔は世の理、もう後戻りはないんだよ』

くるみのテレパシーはそこで途切れた。もう話は終わりということか。

(なんて激しい思い込み。くるみちゃんには何も見えていないし、何も感じていない。なぜそこまで世界を閉ざすの? なぜそこまで絶望を望むの?)

巨大な黒い影は声ともいえないような叫び声をあげた。絶望と悲しみ、苦痛と悲痛、ありとあらゆる負の感情を乗せた金切り声のような叫びとともに、全身に黒いモヤを纏った。膨大な穢れに身を包み、史上最強の魔女と言われたワルプルギスの夜を超える魔力が解放される。

「くるみちゃん、あなたの未来は絶望じゃない、悪魔になんてならない」

この世のものとは思えない強大な魔力の塊にマミは立ち向かった。杏子を助け逃げ帰るつもりだったが、くるみの絶望を救いたい。マミはどこまでも優しく、そして強い魔法少女だった。弱く傷つく者を見捨ててはおけない。くるみは想像を絶する魔力の波動を放っているが、心はとても弱い。希望を失い絶望にひた走るその精神状態は、思春期の少女が陥る思い込みによる狭小世界。まるで迷子の子供のようだった。マミの脳裏に、オフィス街で出会ったくるみの幼い笑顔が蘇った。

「悪い夢は終わらせましょう」

螺旋階段の外側に張り巡らせたリボンから、大量のマジカルマスケット銃が立ち上った。マミは両手に1丁ずつマスケット銃を握りしめると、リボンからリボンへ飛び移りながら、打っては持ち替え、打っては持ち替えを繰り返した。マスケット銃は西洋の古銃だが、銃弾の威力はマミの魔法の力に依存する。魔力を帯びた銃弾は、すべてくるみの片腕の付け根に集中して着弾した。

「痛いでしょ。痛いわよね。ごめんなさい」

魔法少女は、ソウルジェムで痛覚を遮断させれば痛みを感じなくなる。くるみは痛みなどまったく感じていないのだろうが、マミにはくるみの痛みが我が身のように感じられた。マミの銃弾は、くるみの身体と心を傷付けていた。

マミの銃弾が貫いたくるみの身体からは、黒いモヤがどんどん溢れ出てくる。全身に溜め込まれた穢れのモヤが、真っ黒な煙のように螺旋階段を覆っていった。

しかし、くるみもやられているだけではない。いくらマミの魔弾の威力が高くても、たかが数十発の銃撃で動きを封じられるものではなかった。くるみの黒い手が長く伸び、マミへと迫る。指先は尖り、鋭利な刃物のように鋭い五指でマミに掴みかかった。ほむらの時と同じく、執拗にマミのソウルジェムを狙っている。マミはしなやかに浮き上がると、指と指の間をすり抜けて黒い手を蹴り上げ、宙返りしながら頭上のリボンへと飛び移った。

「強大な力には、それなりに弱点もあるのよ」

そこからさらに上へと飛び上がり、豊かな胸の間から等身大のマスケット銃を持ち上げると、両手で構え轟と撃ち放った。今までのマスケット銃の数倍はありそうな大きな銃弾がくるみの肩に命中する。くるみも腕を伸ばして飛び上がったマミの身体を狙ったが、マミは放った銃撃の反動で後ろに跳ね上がったので、くるみの腕は空を切った。

マミは、自分の力とその使い方をよくわかっている。

「無限に成長する魔力に、扱いが追いついていないのよ」

己の魔法、腕力、素早さなど、持ち合わせた能力は使い方次第で強力な武器にもなり弱点にもなる。マミは戦いの最中、かつて杏子に教えた魔法少女としての戦い方を思い出していた。

 

続く

 

 

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