オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

【まどマギ小説】魔法少女まどか☆マギカ 別編~再臨の物語~(2-20)

投稿日:2018年5月7日 更新日:

再臨ロゴ2

 

杏子を瀕死に陥れ、ほむらにまで重傷を負わせるほどの力を持つ魔法少女。いや、もはや魔法少女と呼ぶべきかどうかもわからない魔法の契約者、螺良(つぶら)姉妹。彼女らがなぜ魔法少女を殺す存在になってしまったのか、マミには少しだけわかる気がした。

(きっと、生きることに絶望している)

特別な力を手に入れ、他人と違う能力を持ったところで、悲しみを忘れることはできない。どんなに力を付け絶対的な存在となったところで、悲しみを打ち消すことはできない。過去の幸せ、家族との安寧、思い描いた未来、そのすべてを失って魔法少女に転身したものの、待ち受けていたのは魔女との戦うだけの過酷な運命。そんな日々は心を疲弊させ精神を侵していったのだろう。

絶望から希望への相転移によって生まれる強い感情エネルギーは、再び絶望へと堕ちる際にはそれ以上のエネルギーを持つ。人間の中でも、とりわけ「第二次性徴期」と呼ばれる思春期の少女が持つこの熱量は莫大な量に達する。

螺良姉妹の願った魔法少女への祈りは、悲しみの行方を捻じ曲げる負の感情。救われぬ感情は強い因果となり、ふたりの魔力の源となり、やがて膨大な量の穢れを発生させた。しかし穢れの蓄積されないあかねと、穢れが溢れないくるみのソウルジェムは、魔女と成り果てることもなく、円環の理に導かれることもなく、永遠に穢れの呪縛から解かれることがない。

穢れは魂をむしばみ
理性や慈しみを失い
愛情や友情を失い
人の心を失っていく

ソウルジェムがグリーフシードへと変わらなくても、ふたりの魂は果てしない絶望に浸されている。姿は魔法少女のままでも、ふたりの魂はすでに魔女そのもの。今はすべてを滅ぼし、自らも破滅を迎えるためだけに生きようとしているのかもしれない。

そして彼女たちはなぜ魔法少女を殺しているのかも、よくわかっていないのだろう。今はすべてが憎い。暴走する感情の矛先は、限りある命に向けられている。決して滅びることのない魔法少女が求めたのは、滅びという理想。

生きることを望む生命はやがて死へと向かう。その理もまた生きるものの運命。人も魔女も、そして魔法少女も。

「 矛盾しているわよね」

マミはくるみを送って行った市松模様の家の前にいた。ほむらとキュゥべえの話を聞き、杏子の居場所を確信した。ただひとりでここへ来たのは、マミなりの考えがあったからだった。

ひとつは、重傷を負ったほむらを見てマミは気付いたことがあった。ほむらのソウルジェムには薄っすらと穢れが漂っていたが、まだ魔力に余力があるように見えた。なのに、なぜほむらは魔力で肉体修復をしなかったのか。おそらくほむらには何か考えがあるのだろう。魔力の消費を抑え、機を伺っているのかもしれない。だからあれだけの重傷にも関わらず魔力を使わずにいた。命を留めるギリギリのラインで魔力を封印し、温存している。ならばこの後は任せるべきだと思い、ほむらを置いて来た。

そし て、ゆう子も連れてこなかった。

(ゆう子ちゃんも、暁美さんの家で待っててちょうだいね。もう、これ以上の犠牲は出したくないから)

自分とほむらで足止めをし、ゆう子に杏子を連れて逃げてもらう算段だったが、ほむら無しではゆう子にまで危害が及ぶ可能性が高い。危害が及ぶどころか、魔力の低いゆう子が1番殺される可能性が高い。

マミには気負いもあった。それは、杏子たちを巻き込んだ責任を感じているからだった。しかし決して死に急いでいるわけではない。命を懸けて杏子を助ける覚悟はあるが、ここで死ぬつもりはなかった。杏子を連れて逃げる。ほむらに何か策があるのなら、今は螺良姉妹の相手をするよりも、後輩であり、弟子であり、妹のような存在の杏子を何としても救い出す。その為に多少の自己犠牲は厭わない。

「みんな、黙って出てきちゃってごめんなさいね。でも佐倉さんは私が必ず取り戻すから」

市松模様の家はひっそりと建っている。辺りを通りかかる人はなく、柔らかな午後の風が足元の草花を揺らしていた。晴れ渡った青空と緑の草花に映える白と黒の市松模様。

マミは黙ってその扉を開いた。

中は薄暗くてよく見えない。扉を大きく開け放つと、差し込む陽の光が建物の中を照らしていき、その明るさに反応するように部屋の中の白黒模様がはっきりと見えるようになった。白は白く明るく、黒は黒く暗く、明暗と濃淡をくっきりと映し出す市松模様はあまりに鮮やかで美しく、そして妖しい文様だった。

目の前に広がるのは大きな螺旋階段。階段も、部屋の床も壁も、すべてが白黒模様で広がっている。マミは部屋の中へゆっくりと足を入れた。人の気配はない。

(誰もいないのかしら)

くるみと別れてからしばらく時間が経っているから、どこかに出掛けてしまったのか。他の魔法少女を探しに、見滝原の市内を彷徨っているのか。マミが部屋の中へ数歩、歩みを入れると後ろの扉が

ガタン

と大きな音をたてて閉じられた。チラっと振り返るが、誰もいない。扉の上には「入口」と書かれた非常灯が灯っているだけだった。マミは正面の螺旋階段に目をやった。ゆう子が言っていたのはこの階段だろう。建物の中には他に部屋らしきものは見当たらない。支柱のない奇妙な螺旋階段が上へ上へと伸びていて、行きつく先は闇の中に消えている。

杏子の姿はどこにもなかった。

マミは静かに階段を上って行った。くるみたちがいないのは都合がいい。余計な戦いは避け、杏子を見つけ連れ帰る。大きな螺旋階段をぐるぐると上っていくと、やがてマミの足にヌルっとした感触があった。白と黒の市松模様を乱す赤黒い滴りは、血の跡だった。すぐに見上げると、それは階段の上から垂れていたのだと気付いた。頭上から突き抜けた刃の穂先から、ポタっと一滴の血がマミの頬に垂れ落ちた。あの刃は、大きな穂が特徴的な杏子の槍だ。

「佐倉さん!」

慌てて階段を駆け上がったマミの目に飛び込んできたのは、胸に槍の突き刺さったままの無残な杏子の姿だった。左腕を失い、ミントグリーンのパーカーを黒く染め、突き刺さる槍の柄には杏子のと思わしき腕が掴んだままになっている。マミは思わず目を背け、両手で口を覆った。戦慄すべき光景だった。それでも力の限り瞼を開けその凄惨な姿を見ると、杏子の眼は閉じられたままで、顔は血の気が引いていて土黒い。命の灯火が消えているように、まるで死んでいるように、その細い身体は横たわっていた。

「酷い……」

トドメのひと刺しと思われる突き刺さった槍、噴き出した血の跡、何より残酷なのは、そのまま放置されている身体。罪悪感も慈悲の心も何も感じられない、殺すというよりもただ壊しただけのような有様。マミに込み上げてくる感情は、怒りと悲しみと恐怖だった。

 

続く

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