オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

【まどマギ小説】魔法少女まどか☆マギカ 別編~再臨の物語~(2-19)

投稿日:2018年4月30日 更新日:

再臨ロゴ2

 

マミたちが魔法少女になるずっと前。とある北の都市でキュゥべえと契約を交わしたふたりの少女がいた。

少女たちの名前は螺良(つぶら)くるみと、姉の螺良あかね

双子の姉妹だった。ふたりは両親を亡くし絶望のあまり命を絶つ寸前でキュゥべえと出会い、お互いの願いを告げていた。

姉のあかねの願いは「どんな悲しみも忘れられること」
そして妹のくるみの願いは「どんな悲しみにも耐えられること」

それぞれの願いは成就され、ソウルジェムが輝き、魔法少女となった。

ふたりは強かった。

魔法少女としての力もさることながら、願いによって生み出された異質な能力があったからだった。

あかねの願い「どんな悲しみも忘れられること」

それは魔法少女としての体質に影響し、彼女のソウルジェムはどんなに魔力を使っても穢れが蓄積されることがなかった。

そして妹のくるみの「どんな悲しみにも耐えられること」という願いも、いくら穢れを蓄積しても魔女化せず、永久的に穢れを溜め続けることができるソウルジェムを生み出した。

ふたりの願いは己の欲望を満たすためでなく、誰かを救うためでもない、ただ悲しみの行方を捻じ曲げるだけのものだった。

この願いによって生み出されたふたりは、魔法少女の決定的な弱点、穢れの蓄積によって魔女化するというルールを覆すイレギュラーな存在だった。常に全力で魔力を開放し、どんな強大な魔女も打ち破り、そして力を付けていった。

初めのうちは魔女と戦うことに何の疑問も抱かなかったふたりだが、やがて魔女を退治する魔法少女の役目を放棄した。いや、正しくは魔女を狩る意味の無さに気付いてしまった。魔女が落とすグリーフシードは、穢れの浄化以外に使い道がない。穢れの蓄積されないソウルジェムを持つあかねと、いくら穢れが蓄積されても溢れることのないソウルジェムを持つくるみにとって、グリーフシードは無用の長物だった。

ふたりはしばらくして、キュゥべえの前から姿を消した。

「その後、彼女たちがどこでどうしていたのかは僕にはわからない。円環の理以降、魔女の産まれない世の中で魔女化することもなく、穢れの溢れないソウルジェムは円環の理に導かれることもなく、今は魔法少女を殺す魔法少女になってしまったようだね」

キュゥべえの回想を黙って聴いていたほむらは思った。やはり魔法少女という存在は、正義の味方ではない。奇跡と魔法を司る者ではない。希望と祈りによってもたらされた魔の力は、絶望と破滅を招くだけだ。

「インキュベーター、あなたはとんでもない化け物を生み出してしまったようね。今の話を聴いていると、その姉妹は弱点の無い不死身の魔法少女ということになるわ。魔力に限界が無いということはいくらでも魔法の力を開放でき、穢れ知らずのソウルジェムは永遠の肉体修復を可能にする。おまけに魔女を狩ることに飽いた挙句、今度は魔法少女を狩る魔法少女になってしまった」

ほむらは見下すように、軽蔑の目を向けて言葉を吐き捨てた。

「僕はただ、僕たちの意思に則って魔法少女の契約をしているだけだからね。すべての事象、すべての因果で宇宙のエントロピーが増大するのは自明の理だ。だから、限りある宇宙エネルギーの継ぎ足しをすることが僕らの存在意義でもある。その過程で些細なイレギュラーは付きものだよ」

「些細ですって?」

「そうさ。あの姉妹にしたって、魔女に成らなかったことは些細なイレギュラーだ。いや、その前に彼女たちの願いがイレギュラーだったのかな。どんな望みも叶うというのに、感情を封じ込めるだけの願いを言うなんて。人間は特にそうだね。君たちの持つ感情という現象は、極めて稀な精神疾患でしかない。それは僕たちの干渉の及ばない部分なんだよ。感情の影響が強すぎるせいで予想の範疇を超えたことが起こる。まったく、人間というのは不思議な生命体だね」

「その感情が、人間の欠点であり美点でもあるのよ。あなたに言っても無駄でしょうけど」

「僕は君たちのことを否定するつもりはないよ。その感情があるお陰で僕たちは莫大なエネルギーを回収できたわけだからね。それよりも、あの姉妹を相手に杏子を助けようなんて自殺行為もいいところだ。君たちが束になったところで、とても敵う相手じゃない。今のあのふたりは魔法少女でも、魔女でもない。無限の力を宿した魔力の塊といってもいい。君の知っている力と比べるなら、そう……あのワルプルギスの夜以上だね」

限界のない魔力の成長で、最強最悪の魔女を超える力を身に付けている。そんな相手がふたりもいること自体、戦慄すべき状況だった。

「待って。杏子を助けるとはどういうこと?」

ほむらは杏子の件を知らない。今ここに杏子だけがいないこと、なぜゆう子たちがここに来ているのかを尋ねた。

「あ、あの……多分その螺良っていう人のところに杏子ちゃんが閉じ込められちゃって、まだ生きてるはずだからほむらさんと一緒に助けに行こうって、巴さんが……」

ゆう子は簡潔に状況を説明しながらマミの方を見ると

「巴さん?」

いつの間にか部屋の中からマミの姿は消えていた。さっきまでゆう子の横でソファに座っていたはずだが、ゆう子もほむらも気付かぬうちにどこかへ行ってしまったようだった。

「そういえば巴さんも、螺良くるみって子を知ってるみたいでしたけど」

「今の私とキュゥべえの話で何か思いついたってことかしら。まさか、ワルプルギスの夜を超える魔法少女にひとりで立ち向かう気?」

「巴さんは、私とふたりじゃ無理だけど、ほむらさんと3人なら何とかなるんじゃないかって……」

(私たち3人で何とかなるですって? 冗談じゃないわ、私たちが100人で束になってもどうにかなる相手じゃない)

ほんのわずかな時間だが、螺良くるみを相手にしたほむらはその力量を見てきた。あの時は逃げ延びるだけが精一杯だった。しかもくるみは遊び程度の力しか出していなかっただろう。生きてあの結界を脱出できたことは奇跡に近いといってもいい。

ほむらの身体はマミの魔力修復によって外傷は癒えているが、体中の骨が折れていて満足に動ける状態ではなかった。マミもしばらくグリーフシードで穢れを浄化していないから、魔力に余力を残すためにほむらの肉体修復は最低限に留めたのだろう。そしてほむらの状態を見て戦力から除外し、まだ魔力の低いゆう子を置いてひとりで行ってしまったのだと思った 。

杏子が捕らえられているとわかっていて放っておくマミではない。そんなマミの考えが手に取るようにわかったほむらは、部屋の出口に目をやり

「ひとりで行くなんて、あなたの方がよっぽど背負い込んでいるわ」

と、小さく呟いた。

 

続く

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