オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

【まどマギ小説】魔法少女まどか☆マギカ 別編~再臨の物語~(2-17)

投稿日:2018年4月16日 更新日:

再臨ロゴ2

 

白と黒の市松模様で構成された閉鎖空間で、小さな少女くるみを見下ろすほむらと、上目でほむらを見上げるくるみ。紫色の魔力を纏ったほむらは冷静に、淡々と話しかけた。

「ずいぶん可愛らしい魔法少女さんだけど、その見かけはまやかしね」

見た目は幼い少女だが、くるみの発する魔力の波動は普通の魔法少女のそれとは桁違いだった。可愛らしい姿と裏腹に、底知れぬ邪悪な魔力を秘めているように感じた。そしてこのモノクロな閉鎖空間は、魔女の結界特有の異次元世界。杏子の魔法結界のように魔力の網を張り巡らせているのとは違い、これは魔女の結界そのものだった。

「ふふふ、見た目なんて魔法でどうにでもなるんだから」

そう言ってくるみはゆらめく水面のように身体をなびかせると、次々と見たこともない魔法少女に姿を変えた。

濃いグレーを基調としたロングヘアの魔法少女、唐紅色を基調としたツインテールの魔法少女、緋色を基調としたミディアムヘアの魔法少女。どの少女も見たことがないが、「第二次性徴期」と呼ばれる十代前半の魔法少女の姿だった。これは魔力で身体の構造を変化させる高度な変身魔法。ほむらたちも魔力による肉体の修復は可能だが、身体の構造そのものを変化させるほどの魔法は使えない。

「紫色のお姉さんにも成れるけど、お姉さんはまだ生きてるからやめておくね」

と、緋色の魔法少女の姿で、当人と思われる少し大人びた声で言うと、くるみは元の幼い少女に戻った。紫色のお姉さんとは、ほむらを指している。

「なるほど、あなたのしてきたことが何となくわかったわ。あなたは、この街の魔法少女を殺しに来たのね」

「ふふふ。殺しに来たって言い方はちょっと酷いけど、似たようなものだからいいや」

くるみが見せた変身魔法は、過去に殺めた少女たちの姿なのだろう。

「それにお姉さん、それがわかっててくるみを呼んだんだよね。わざわざ魔力の光を見えるようにしてさ」

魔力の光を纏い、ソウルジェムの持ち主を呼び寄せようとするほむらの狙いは当たった。そして見滝原にやって来た理由も、この街にいる魔法少女が目当てだった。この街の魔法少女を殺すためにやってきていた。が、ほむらは別に驚くこともなく左手で長い髪を軽く撫で揺らしてから

「もう一度訊いておこうかしら。あなたは本当に魔法少女なのよね」

さっきと同じ質問を繰り返した。

「そう、くるみはキュゥべえと契約した魔法少女。お姉さんと同じだよ」

「私と同じ?」

「お姉さんも魔法少女なんでしょ?」

「ええ、そうね。でもあなたと同じではなさそうよ。私はソウルジェムの穢れでいずれ滅びゆく存在だけど、あなたはそうではないわね」

「お姉さんすごいね。くるみのこと何でもわかっちゃうんだ」

くるみは「ふふふ」っと不気味に笑った。

「魔法少女って不便だよね。いちいちソウルジェムの穢れを気にしていなきゃいけないもん。それで穢れが溢れたら死んじゃうんでしょ? それじゃ何のために生きてるかわからないよね。でもくるみは違うの。だってくるみのジェムは、どんなに穢れが溜まっても溢れることがないんだから」

小さな掌に、くるみの真っ黒なソウルジェムが現れた。それは黒く、どこまでも黒く、まるでこの世の黒という色を一点に集約させたような漆黒で純黒な魂の宝珠。向き合うほむらを黒い光が照らし、影になる部分が白くなっている。強すぎる闇の閃光が周囲の市松模様に作用し、白は黒く、黒は白くと、色配置までも逆転させた。ソウルジェムから溢れる光は、濃縮された穢れが放つ放射光だった。このジェムは、途方もない量の穢れを溜め込んでいる。

やがて放射状に広がる光が渦を巻くようにねじ曲がり、くるみを包んだ。黒い光の帯がくるみの身体を二重螺旋状に取り巻くと、幼い少女は真っ黒な影へと姿を変えた。影といっても立体的な、少女の身体がそのまま黒く染まってしまったような恰好。真っ黒な姿の中には淡い小さな光がいくつも、チラチラと光っていた。両手を横に広げクルリと横回転をした黒い影から、ほむらにテレパシーが伝わってきた。

『お姉さんのソウルジェムに溜まる穢れも、くるみが食べてあげる』

ほむらは素早く後ろに飛び退き、紫色に輝くソウルジェムを掲げると、足元から頭に向かって白と紫の光を煌めかせ魔法少女に変身した。左手の甲にはうっすらと穢れが揺れる、ダイヤ型のソウルジェムが収まっている。ほむらはそのまま高く飛び上がり、上空からくるみを見下ろした。

「穢れを食べるですって?」

『くるみは穢れを食べて生きてるんだよ』

黒い影は宙に浮いた状態から一気に加速してほむらに迫った。目も鼻もないのっぺらぼうな顔は口だけを大きく開き、ほむらのソウルジェムが収まる左手の甲に噛り付こうとしてきた。ほむらは間一髪で身体を捻り左手を引いたが、その突進までは避けきれずにそのまま体当たりを喰らってさらに上空へと跳ね飛ばされた。結界内の空は無限に続いておらず、内膜のような結界の壁に激突し落下した。

ほむらを跳ね飛ばしたくるみの黒い影は空中でクルリと横回転すると、広げた両手を長く伸ばしてほむらに掴みかかってきた。

黒い腕が、伸びる。

身体的構造を魔力で捻じ曲げている。腕の先の両手はほむらの身体の倍以上はありそうな程に大きい。ほむらが空中に逃れると、ドドーンという音と共に黒い両手が道脇にある市松模様の建物を破壊した。白と黒の破片が飛び散り、砕けた建物の隙間からは薄っすらと白い光が漏れていた。ほむらは空中で一度制止すると、黒い腕が建物から引き抜かれる前に漆黒の弓を手に取り、淡いピンク色に発光する矢を番えた。六千石町でのあの時、一撃で魔獣を仕留めた光の矢だった。キリキリと引き絞り、黒い影本体に向けて狙いを定めたが、何を躊躇ったか弓を番える腕の力を抜いた。

『ふふふ、どうしたの? それ、撃ってこないの?』

くるみの黒い影は伸ばした腕を建物に突き刺したまま動かない。ほむらは弓矢をその手から消すと

「そうね、この最後の一矢はあなたに撃つことはできないわ」

と言って砕けた建物の隙間から漏れる白い光を見た。あれはこの閉鎖空間と現実世界を結ぶ結界の裂け目だ……と思った時には建物を砕いた黒い両手はもうそこにはなく、眼下にいたはずの黒い影も視界から消えていた。ハッと見上げるとほむらよりもさらに上から腕が振り下ろされ、今度は避ける間もなく巨大な両手に弾かれて地面に叩きつけられた。白黒の路面は激しく砕け、砂煙が上がる中に額から血を流すほむらがいた。

身体がバラバラになりそうなくらいの強い衝撃を受け、固い地面に叩きつけられ、ほむらは軽い脳震とうを起こした。めまいと激痛ですぐには起き上がれない。

そこへさらに黒い腕が一直線に突き出される。伸びた両腕はほむらの両足を掴み、そのまま空中に向かって引き寄せてきた。のっぺらぼうだった顔は大きな口を開けて待ち構え、ほむらの身体ごとソウルジェムに喰らいつこうとした。

両足を掴まれたほむらは逃れようがない。咄嗟に隠し持っていた手榴弾のピンを抜き、自分と黒い影の間で爆破させると、火薬の破裂と爆風でほむらと黒い影は引き剥がされるように吹き飛ばされた。掴まれていた両足は解かれたが、殺傷能力の高い破片手榴弾の破裂でほむらもひどい裂傷と火傷を負ってしまった。ほむらの身体を覆う薄い魔力の膜で爆発の威力は軽減されているが、普通の人間なら粉々になってしまうほどの威力を持つ【MK2破片手榴弾】の使用は仕方なかった。あのままでは間違いなく、身体ごとソウルジェムを喰われていただろう。

市松模様の地面に落下したほむらはよろめきながら、もうひとつ手榴弾のピンを抜いた。それは黒い影に対する攻撃ではなく、結界の裂け目を広げるためだった。今のほむらには時間操作の魔法もなく、魔獣を仕留めた光の矢も使えない。魔力で自らの傷を癒すのが精一杯だった。

ここは、逃げる。

再び手榴弾の激しい爆裂と共に、結界の壁と思われる場所に穴が開いた。ほむらは懐から最後のひとつ、【M84閃光手榴弾】を黒い影に向けて投げつけた。これは爆撃というよりも爆発音と閃光による目くらましのフラッシュバンで、ほむらはその爆発の隙に結界に開けた穴から抜け出した。



くるみは強い。

ほむらの読みは浅かった。魔力の差が桁違いで、ほんの少し戦っただけで絶対に勝てないと思い知ってしまった。しかも相手は本気でほむらを殺しにきている。穢れを食べると言っていたが、それはつまりほむらのソウルジェムを喰うということなのだろう。恐らくそれが、くるみの魔法少女としての能力。言うなれば、ソウル・イーター(魂を喰らう者)

過去どれだけの魔法少女がくるみの餌食となり、ソウルジェムを喰われてきたのか。

結界を抜け出たほむらは肉体修復を最小限に抑え、ボロボロの身体を引きずって逃げ延びた。

 

続く

ブログランキング・にほんブログ村へ









-オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

Copyright© アニもに! , 2018 AllRights Reserved.