オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

【まどマギ小説】魔法少女まどか☆マギカ 別編~再臨の物語~(2-14)

投稿日:2018年3月26日 更新日:

再臨ロゴ2

 

螺旋階段に長槍が突き刺さり、杏子の魔法少女が解けた。胸の真ん中、ちょうど杏子がソウルジェムを装着していたところを大きな穂が貫き、そのまま階段の足場まで串刺しになった。槍の穂先からは赤い血が滴り、階下からはピチャピチャと鮮血が垂れ落ちる音が聞こえた。

白と黒の市松模様をした螺旋階段。螺旋といっても綺麗な円形を保っておらず、いびつなうねりでそびえる不気味な階段。真っ赤に染まった杏子の身体と、階下に溜まる血の澱みが、暗闇の中で黒く映えていた。

「あれ? もう終わっちゃったの?」

「うふふ、この子すごく強かったよ。こんなに強い魔法少女に会ったのは初めて」

「でも、死んじゃったね」

「うん、死んじゃった」

「もうひとりの子はあんまり強くなかったけどね」

「あれはあなたが逃がしちゃったじゃない」

「ふふふ、また今度遊んであげるからいいの。それに、もうひとり魔法少女を見つけたのよ」

「あら、あなた独り占めするつもり?」

「大丈夫よ、お姉ちゃんにも分けてあげるから」

幼い少女ふたりの声が、明かりの点いていない白黒の建物の中で交錯した。

片腕を失くし、胸を貫かれた杏子はピクリとも動かない。弾き飛ばされた左腕は槍を掴んだまま、無残な姿を晒していた。

ここはマミがくるみと別れた場所。小高い丘に建つ、白と黒の市松模様の建物。都市開発が進められている近未来型都市の見滝原には似合わない奇抜なデザインは、通りかかる人の目に付きそうであるが、誰もその建物に目を向けることはなかった。

ショッピングモールでゆう子と合流したマミは、電話では伝えきれなかった経緯を聞いていた。使い魔と思われるブリキの兵隊人形、ワルプルギスの夜に匹敵する強い魔力を持つ白い影、そして未だに戻らない杏子。ゆう子が魔女の結界を抜け出してから、すでに1時間近くが経過していた。マミが来るまでの間、ゆう子はずっと裏口の扉を見張り杏子が戻るのを待っていたが、杏子はもちろん他の誰も扉から出てくることはなかった。

「あの扉です」

ゆう子は薄暗い裏口にある扉を指さした。従業員用の出入り口にしか見えない鉄の扉は閉ざされたままで、人の出入りもなければ裏口の通路に入る者もいなかった。マミはゆっくりと扉に近づき、ドアノブに触れた。
ガタン
っと重い扉を開き中に入ると、そこには3階まで伸びる折り返しの階段が設置されている。階段の足場には明かりが灯り、壁に貼られている案内表には各階にあるショップの名前が記されていた。誰の目にもわかる、従業員用の裏口階段。ゆう子が見た螺旋状の階段はどこにもなく、ごくありふれた建物のバックヤードがそこにあった。

「あの、私が入った時はこんな感じじゃなかったんです。真っ暗で、階段もぐるぐる回るような作りで……」

ゆう子は慌てて説明する。

「大丈夫、わかってるわ。ゆう子ちゃんが入ったのは特殊な閉鎖世界、異空間だったのよ。今は正常な建物に戻っているわ」

マミは階上を見上げてから扉を閉め、オレンジ色のソウルジェムを取り出すと扉の前にかざしてみせた。

「見て、かなり発光しているでしょ。これは魔女の結界があった証拠。この扉が結界の入り口になっていた証ね」

ソウルジェムはオレンジ色の光を強く揺らめかせていた。すでに魔女の結界は消え去っているが、その残り香というか、ついさっきまであった魔力の痕跡に反応していた。そしてマミのソウルジェムには黒いモヤが薄くゆらゆらと、さほど多くはないが、はっきりと見て取れるほどに混じっていた。

マミは再び扉を開けて外に出ると

「魔女の結界が消えているということは、佐倉さんはどこか別の場所に抜け出ているのかもしれないわ。待ってね、私のソウルジェムで佐倉さんの魔力の波動を探ってみるから」

と言ってソウルジェムを額に当て目を瞑った。ソウルジェムの探知機能を杏子の魔力の波長に合わせ、居場所や状況などを見ることができるのだが、マミに見えたのは真っ暗で何もない、ただ微かに血の匂いがするだけだった。

マミはソウルジェムを使って杏子の目線を見ることができるのだが、真っ暗で何も見えないのは杏子の目が開いていないからだと思った。ひとり戦いに残った杏子の目が閉じられているということは……

そしてこの微かな血の匂い。

目を瞑ったマミの瞼に、グッと力が入った。

「ご、ごめんなさいね。私の魔力探知でも見つけられないわ、どうしちゃったのかしら」

暗闇と血の匂いが意味するものが何なのか、マミはすぐに悟った。それでも動揺を抑え、努めて平静を保ちながらゆう子とキュゥべえに

「状況が掴めない今、闇雲に探索を続けないほうがいいわね。ここはひとまず、暁美さんの家に行きましょう」

集合場所の公園ではなく、ほむらの家に行こうと言い出した。実はマミは今の状況がわからないのではなく、むしろかなり不味い状態だと感じていた。

杏子は恐らく、戦いに敗れた。

そして魔女の結界は消えている。

ソウルジェムを使って結界の行方を辿ることはできるが、ゆう子とふたりでワルプルギスの夜に匹敵する敵を相手するのは危険過ぎる。ここはほむらを交えて善後策を練るのが賢明だと判断した。

 

続く

 

ブログランキング・にほんブログ村へ









-オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

Copyright© アニもに! , 2018 AllRights Reserved.