オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

【まどマギ小説】魔法少女まどか☆マギカ 別編~再臨の物語~(2-13)

投稿日:2018年3月19日 更新日:

再臨ロゴ2

 

マミとの通話を終えたゆう子は、キュゥべえと一緒にモール内の建物の前にいた。魔女の結界を抜け出した先は裏口の扉で、そこからメイン通路に出てすぐに電話をかけ、マミの到着を待つことにした。

「ねえキュゥべえ、杏子ちゃんは大丈夫だよね」

「さあ、どうかな。さっきの白い影が放っていた魔力の波動はとても強かったからね。そう、例えるならワルプルギスの夜と同等か、それ以上か」

「ワルプルギスの夜?」

「数か月前にこの街に現れた、最強最悪の魔女だよ。杏子たちが束になっても敵わない相手だ」

ワルプルギスの夜、それは舞台装置の魔女。かつて見滝原市に現れた史上最強の魔女は未曽有の大災害として君臨したが、ひとりの魔法少女の手によって消滅していた。

「そんなの相手に杏子ちゃんひとりで戦えるわけないよ。やっぱり私も戻らなきゃ」

「いや、やめておいた方がいい。君の力じゃ杏子の足手まといになるだけだ。それより……」

キュゥべえは引き返そうとするゆう子を制し、何か気になった様子で問いかけた。

「さっきの使い魔との戦い、途中から君の移動能力がおかしかったね。もしかしてソウルジェムに穢れが蓄積されているせいじゃないのかい?」

「え? 私のソウルジェム?」

ゆう子は左耳のイヤリングにはまるソウルジェムをキュゥべえに見せた。ジェムは鮮やかな赤紫色を放っており、黒い陰りのようなものはまったく混じっていなかった。小さな紅い瞳でソウルジェムを見つめたキュゥべえは

「濁りのない、綺麗なジェムのままだね。むしろ綺麗すぎるくらいだ」

と、何か腑に落ちないように言った。

「魔法少女になりたての君は、魔力もそこまで強くないはずだ。いくらかの穢れが蓄積されたせいで魔力のコントロールが鈍ったのかと思ったけど、そうではないらしい」

もともと魔法少女としての素質が高かったわけではないゆう子は、魔力の限界もまだ低い。半人前以下の魔法少女があれだけの能力を多用すれば、少しくらいの穢れが蓄積されてもおかしくないが、ゆう子のソウルジェムはあまりに綺麗だった。ゆう子はソウルジェムを耳に戻し

「そういえばあの時、だんだん意識が遠くなっていく感じがして、とても気分が悪かったっていうか、自分の感覚が薄れていくような気がしてたの。どうしてだろう」

戦いの最中に感じていた違和感を思い出した。

「今は何ともないのかい?」

「今は平気、かな。それよりも杏子ちゃんのことが心配で……」

ゆう子は早くマミが到着しないかと辺りをキョロキョロするが、その姿はどこにも見当たらなかった。それもそのはず、マミはショッピングモールからかなり離れた所にいたので、電話を受けてから数分で辿り着ける距離ではなかった。杏子を残して脱出した今はマミの到着を待つのが最善と分かっているが、どうも胸騒ぎがしてならない。あの杏子が負けてしまうとは考えられないが、キュゥべえの言う最強最悪の魔女と同等かそれ以上かという言葉に、不安は拭えなかった。

「キュゥべえ、魔法少女も死んじゃうことはあるの?」

ゆう子は不吉と分かっていても杏子の身が気になり、つい聞いてみた。

「君たちの考える【死】の定義で言うならば、魔法少女も死ぬことはあるさ。1番確実な死はソウルジェムの破壊。ソウルジェムが砕ければ、どんなに肉体が無事でも確実に死ぬことになる。その宝珠には君たちの魂が宿っているからね」

キュゥべえの目線に釣られて、ゆう子も自分の左耳に指を当てた。

「魂という言い方は曖昧だけど、つまりは生命そのものがソウルジェムに移し替えられているんだ。だから君たちの肉体はただの飾りで、どんなに激しく傷付けられても、心臓を破られても、ありったけの血を抜かれても、魔力で修復すれば死ぬことはない」

ただし、とキュゥべえは付け加えて

「魔法少女の魔力には限界があるからね、誰でも無限に魔力を使えるわけじゃない。そして魔力の消費は減算ではなく、穢れの蓄積という形で加算されていく。穢れが限界まで蓄積された状態で魔力を行使すれば、ソウルジェムはグリーフシードへと変化し、円環の理によって消滅するのが君たちの運命だ。そういう意味では【魔力の限界】が【死】と捉えることもできる」

ソウルジェムの崩壊、または魔力の限界が魔法少女の【死】

人間の定義からするとこの考え方が妥当だ、とキュゥべえは説明した。グリーフシードが手に入らない今は蓄積された穢れを吸い出すことができないので、杏子たちの魔力には限界がある。ましてや先日の使い魔や魔獣との戦いで魔力を使っている杏子が溜めた穢れは相当な量といってもいい。

「杏子はとても強い魔法少女だけど、その分 魔力の消費も大きい。強い魔力を使えば穢れの蓄積も多くなるからね、言うなれば諸刃の剣ってわけだ」

「じゃあ杏子ちゃんは、あとどのくらい戦えるの?」

「彼女のソウルジェウムを見ないことには何とも言えないけど、まっさらな状態から全力で戦えるのは2回がせいぜいだ。普通はね」

キュゥべえの見立てでは、先日の六千石町での使い魔と無花果の魔獣、そしてさっきのブリキの兵隊人形、杏子がどれだけ本気を出していたかわからないが、一度も穢れの浄化をせずに戦い続けているとすれば、すでに全力2回に相当する魔力を使っているかもしれないそうだった。杏子くらいのベテランになれば自分のソウルジェムがどれだけの穢れを溜めているかわかるから、ある程度はセーブして戦うこともできるが

「魔力を抑えて勝てる相手には見えなかったね」

ワルプルギスの夜に匹敵する魔力を持つ相手に、手加減して勝てるはずがない。もちろん杏子は全力で戦うだろう。全力で戦った末に、魔力の限界を超えて【死】ぬか、ソウルジェムを砕かれ【死】ぬか、はたまた逃げ延びることができるか……

おそらく、ひとりで勝つのは無理だ、とキュゥべえは思っていた。

「どちらにしても、君を逃がす選択をしたのは杏子の好判断だ。あのまま君と一緒に戦っていたら、間違いなく杏子は命を落とすことになっただろうからね」

杏子が負ければ、ゆう子ひとりでは絶対に勝てない。強大な相手を前に、杏子はそう判断してひとり残った。

「だから今、あそこに戻ろうなんて考えは起こさないことだ。杏子は君を守るために余計な魔力を使う羽目になるからね」

残酷な言葉だが、それが事実なのはゆう子にもわかっていた。魔法少女として未熟な自分が恨めしかった。

 

続く

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