オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

【まどマギ小説】魔法少女まどか☆マギカ 別編~再臨の物語~(2-11)

投稿日:2018年3月5日 更新日:

再臨ロゴ2

 

白い影は杏子の半分ほどの背丈で両足をピンと伸ばし、あまり長くない髪をツインテールに結んだシルエットをしている。影だけなので表情はなく、スカートを穿いているような恰好で両腕を横に広げクルリと1回転した。

(さっきの使い魔とは比べものにならないくらいの魔力を感じる)

幼い少女のようなシルエットが放つ強い魔力を前に、杏子は先制攻撃を躊躇っていた。

(つーか、コイツは使い魔なのか? こんなに小さいクセに、この魔力の波動は超ド級の魔女レベルだぞ)

杏子の額に汗が滲む。一突きの槍も合わせる前から、対峙しているだけで白い影の魔力に気圧されていた。今まで幾度も使い魔や魔女と戦ってきた杏子も、ここまで強い魔力を発する相手に出会ったのは初めてだった。

だから、敢えてゆう子を逃がした。ひとりよりもふたりで戦う方が有利かもしれないが、半人前の魔法少女であるゆう子を守りながら戦うのは逆に不利と考えた。何より、この影は最初から自分を狙っているような気がしていた。ゆう子への稚拙な攻撃は簡単に躱されていたが、杏子と対峙してから発している魔力の波動はとても強く、殺気がありありと感じられる。

その殺気を跳ね返すように、先に動いたのは杏子だった。

槍を構えた状態から口の中で

「ロッソ・ファンタズマ」

と小さく呟くと、杏子の身体からもうひとりの杏子が抜け出た。それは影でも幻でもない、実体ある杏子がさらにもうひとり、ふたりと、全部で4人の分身を生み出した。5人になったそれぞれの杏子は同じように槍を構えると、ふたりは跳躍し高く舞い上がり、白い影を目がけて槍を振り下ろしていく。残りのふたりは左右に分かれてステップしてから、挟み撃ちするように白い影の横から槍を薙ぎ払った。本体となる杏子は足元から何本もの槍を出現させ、それを白い影に向けて勢いよく発射させた。

上・横・正面からの3方向による同時攻撃。

これは杏子の魔法少女としての固有魔法、幻惑攻撃だった。杏子は最初から全力を出した。

4人の攻撃と遠隔操作で射出された何本もの槍は、同時に白い影を打ちのめした。白い影は避けることもせずにすべての攻撃を喰らって壁に激突し、槍で貫かれた状態で壁に磔になった。

杏子は攻撃の手を緩めず、今度は分身の4人が足元から槍を大量に出現させて投射し、一斉に突き刺す。まるでハリネズミのように何十本もの槍が突き刺さったところに、杏子自身が槍を巨大化させ、突進して振り下ろし壁ごと粉砕した。

粉々に砕けた壁がボロボロと崩れ落ち、白い影は突き刺さった槍と一緒に壁の破片に埋もれてしまった。

が、杏子は用心して後ろに飛び退き距離をとる。分身の4人と一緒に槍を向けて構えると、崩れ積もった破片の山から欠片がひとつコトリと転がった。

「マズい!」

と叫んだ瞬間、白い影に突き刺さっていた何本もの槍が杏子たちに向かって矢のように飛んできた。分身杏子たちは皆 避ける間もなく身体ごと胸のソウルジェムを貫かれ、鮮血をほとばしらせながら消滅した。杏子自身は辛うじて身を引いたが、左の腕を弾かれ、肩から先が千切れ飛んだ。

「なっ……!」

一瞬で分身4人は消滅し、杏子も重傷を負ってしまった。千切れ飛んだ腕が、握っていた槍と一緒に後ろのほうへ飛んでいきカラカラと音を立てて止まる。

杏子は苦痛に歪んだ顔で弾かれた左肩を押さえ、必死で止血と治癒に魔力を充てた。八重歯が唇を噛み、傷みで肩が震え、立っているのがやっとだった。

突き刺さった槍をすべて反射した白い影は再び宙に浮くと、クルリと回転した。まるでダメージを受けていないように平然と、もう一度クルリと回転する。

すると突然、今まであった舞踏会場のような空間が真っ暗に変わり、壁もカーテンもツリーも、足元の床もスッと消えてしまい杏子は暗闇の中に落下した。異空間が異空間に変換され、そこはゆう子が上って来た螺旋階段の部屋になった。部屋といっても、真っ暗で壁も天井も何もない、長い螺旋階段が伸びているだけの空間を杏子はひたすら落ちていく。

「くそっ! これ以上は治癒できない……」

杏子は血で赤く染まった右手を伸ばして螺旋階段の手すりを掴み、階段の足場に乗り掛かった。千切れた左腕の出血は止まったが、腕の再生ができない。杏子は治癒能力に長けた魔法少女ではないが、時間をかければその程度の肉体修復はできる。
しかし、

(これ以上、魔力を使うとソウルジェムが限界になっちまう)

先の分身能力は杏子の最大の魔法だが、同時に魔力の消費も激しい。強力な魔法を使い、さらに腕の治癒でも相当の魔力を使い、杏子のソウルジェムはもう限界に近かった。階段の手すりに掴まったはいいが、すでに魔法少女を維持することも限界に達している。

そこへ白い影が、螺旋階段の上から物凄い速さで降りてきた。杏子の目と鼻の先、ほとんど顔がくっつきそうな距離まで近づいてくると、そこでピタリと止まる。それまでシルエットだけだったはずの顔に口だけが現れ、ニヤリと笑った。

「く……」

片腕を失い魔力も尽き、杏子はもう戦えなかった。胸のソウルジェムは黒い濁りがゆらゆらと漂っている。これ以上魔法の力を使えば穢れが溢れる状況で、もう手の打ちようがなかった。

「……殺れよ」

もはや逃げることも叶わぬと悟った杏子は身体の力を抜き、死を覚悟した。白い影は不気味な笑みを浮かべて槍を振りかぶった。

(クソ! またあたしの槍で!)

弾き飛ばされた左腕が掴んだままの杏子の槍が、胸のソウルジェム目がけて突き出される。鋭利な槍の穂先が一気に振り下ろされ、杏子の胸を貫いた。

 

続く

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