オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

魔法少女まどか☆マギカ 別編~再臨の物語~(2-16)

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ここで少し時間を遡る。

 

ショッピングモールでの出来事の数時間前、暁美ほむらは朝早くひとりで家を出た。前夜にマミからの

「明日は暁美さんも一緒に探しましょう?」

という誘いを頑なに断り、行き先も告げず連絡手段も持たないまま独自の探索を開始していた。

魔女にもならず、消滅もせず、円環の理さえも覆してみせる……。

グリーフシードを探す目的をそう語ったほむらの考えは、マミたちとはだいぶ違っていた。マミのように「魔法少女としての使命をまっとうし、自己の命よりも優先すべき行動を取る」というヒロイズムではなく、杏子のように「無いなら仕方ない」というリアリズムでもない。言うなれば、誰にも頼らずに自らの意思や理念に則り理想を追い求める、排他的で独裁的な考え方が根本にあるといってもいい。そして円環の理以降は、この排他主義と独裁主義が一層強くなっていた。

ほむらはグリーフシードを求める理由を誰にも話していないし、また話すつもりもなかった。

残るひとつのグリーフシードがどこにあるか……実はほむらも知らないのだが、探す当てはあった。マミはグリーフシードが人の手にあるか、もしくは魔女の結界内で孵化を抑えて潜んでいると考えているようだが、そうではないと確信していた。そもそも穢れが溢れる寸前のグリーフシードが人の手にあれば、持ち主の負の感情を吸い上げ、すでに穢れが解放されているに違いない。また結界に潜んでいたとしても同じことで、それはもうグリーフシードなのだから円環の理による導きで消滅しているはずだ。

つまり今、この見滝原にあるのはグリーフシードではなく、穢れに満ちたソウルジェムだとわかっていた。

もともと見滝原にはほむらとマミと、隣街の風見野市から編入してきた杏子の3人しか魔法少女は存在しない。円環の理以降、グリーフシードは魔女を産むことなく消滅するのだから、この街にほむらたち3人以外のソウルジェムがあること自体がおかしいのだ。つまり、本来あるはずのないソウルジェムが見滝原にあるということは、どこか別の場所から持ち込まれた可能性が高い。……ということは、持ち主がいる。

探すべきは、その持ち主。

そして持ち主は、魔法少女だ。

穢れたソウルジェムを持ち、見滝原にやってきた魔法少女がいるはず。そいつはどこから来たのか、何をしようとしているのか、果たして敵なのか味方なのかもわからないが、今はもうほとんど生き残っていないであろう魔法少女が向こうから出向いて来たということは何かしらの目的があるに違いない。ただ、ほむらたちが探知するそれは、すでに穢れが溢れているはずなのに円環の理に導かれることなくこの世界に存在している。

(魔女にもならず、消滅もせず、円環の理さえも覆している)

ほむらが求めるものが、そこにあった。

見滝原を南北に走る国道はこの街の重要な幹線道路で、週末でもたくさんの車の往来がある。北は風見野市へ、南は隣の県に通じる道として、見滝原市のちょうど中心地に敷かれていた。ほむらはその道路沿いを南へ南へと歩く。特に目的地を決めずにただ歩きながら、ほむらは身体から微弱な魔力を発していた。薄く魔力を帯びた身体は、自らの魔力のカラーでもある紫色に発光していた。普通の人間には見えない光だが、同じ魔法少女から見ればすぐにそれとわかる、いわゆる目印のような魔力を発して歩いた。

マミがグリーフシードを探しているのとは違い、ほむらはソウルジェムの持ち主を呼び寄せようとしているのだった。こうして魔力を発しながら歩いていれば、同じ魔法少女なら必ず見つけて接触してくるはず。相手が何か目的を持ってこの見滝原に来ているとすれば、それはほむらたち以外に考えられないからだ。

こちらから探すとなると相手の動き次第になってしまうが、相手に見つけてもらおうとする発想はマミや杏子にはないものだった。

晴天から差す陽が徐々に南の空へと昇り、ほむらの顔を明るく照らした。魔力で発光する身体に陽の光が相まって、紫色の光が一層鮮やかに映えていた。ほむらは時折 足を止めて周囲を見渡したり、道路の反対側を歩く人を見たりと、自分の魔力に気付いていそうな者を探す。そうして1時間ほど歩いただろうか。それまで誰もほむらに気を止める者がいなかったが、オフィス街の横に差し掛かった時、刺すような視線を感じて立ち止まった。

「来た」

どこから向けられている視線か把握できないが、明らかに誰かに見られている。ほむらを魔法少女と認識している。歩道の先、後ろ、道路沿いの建物……ゆっくりと辺りを見回し視線の元を探すが、どこにも人影は見当たらなかった。人影も無ければ、車も通りかからない。ここは市内でも有数の幹線道路。

「ふふふ、こっちだよ」

幼い少女の声がした。ほむらはハッと振り向くと、道路の反対側の歩道から小さな少女がこちらを見ていた。ガードレールの隙間から覗く小さな顔と身体。道路には誰ひとり、車1台と通りかからない。やがて道路や周りの建物がゆらゆらと一斉に色を失い、白と黒の2色だけになってしまった。モノクロームな景色はやがて規則的な色分けになり、碁盤目状の格子の目を色違いに並べた市松模様へと変化した。

「……結界ね」

ほむらはすでに異空間に取り込まれていた。恐らくこれは、現実世界の一部を切り抜いた結界。ほむらは異空間に入り込んだが、現実世界は同じ場所に存在しているのだろう。

「やっぱりこの街にいた。お姉ちゃんの言ってたとおりだね」

少女はてくてくと道路を渡り、ほむらに近づいてきた。異空間である結界を広げたこの少女は、使い魔でも魔女でも、まして魔獣でもない。ほむらはこちらに歩いて来る、5歳か6歳くらいの幼い少女に向き尋ねた。

「あなた、魔法少女かしら?」

「そうだよ。わたしも魔法少女」

わたしも、と言った。少女はほむらの目の前まで来ると足を揃えて立ち止まり、名前を名乗った。

「わたし くるみ。つぶら くるみ」

 

続く

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