オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

魔法少女まどか☆マギカ 別編~再臨の物語~(2-7)

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再臨ロゴ2

 

まだこの世界に魔女が存在していた頃、ほとんどの魔法少女は常に単独で行動していた。それぞれの魔法少女は自分のテリトリーを持ち、その中で産まれる魔女を退治することでグリーフシードを得て、ソウルジェムの穢れを浄化する。同じテリトリーに複数の魔法少女が存在すると、どうしてもグリーフシードの奪い合いが起こってしまい、縄張り争いに敗れた者は新たな場所を求めて移動するか、やがて魔女と成り果てるしか道はなかった。

しかしこの見滝原では今、たったひとつのグリーフシードを探してマミ・杏子・ほむらの3人の魔法少女が協力し合っている。ひとつのグリーフシードで浄化できる穢れはひとり分。たったひとつで全員が助かる訳ではないが、グリーフシードを放置しておくわけにはいかない。魔女が産まれない世の中とはいえ、六千石町でのように魔女の意思が使い魔を動かし、また魔獣と呼ばれる化け物が出てくるかもしれないのだ。

(だから私たちは魔法少女としての使命をまっとうし、自己の命よりも優先すべき行動を取ろうと思うの)

ゆう子は昨夜、マミとの電話でそんな話を聞いた。

グリーフシードは、ソウルジェムの成れの果て。ほとんどの魔法少女が円環の理によって消滅しているこの世界では、新たにグリーフシードが見つかる可能性は極めて低い。

そして

(もしかしたら、これが最後のグリーフシードかもしれない)

とも聞かされた。

最後のグリーフシードを手に入れて誰かの穢れを浄化したとしても、それで命が助かるわけではなく、ただ延命するだけに過ぎない。ならば魔法少女としての運命を受け入れ、ひとつでも多く人々の幸せを守りたい。

そんなマミの想いを知ったゆう子は、ふたつ返事でグリーフシード探しを手伝うと約束した。

杏子たちに救われた自分にできることは、杏子たちの力になることだ。

だから今は、立ち止まってはいけない。自分だって同じ魔法少女なんだ。危険を避けてただ生き長らえるよりも、やらなきゃいけないことがある。足手まといと言われても、できることがあるかもしれない。

「杏子ちゃんの、力にならなきゃ」

ゆう子はそう決心を固めて、杏子の後を追っていった。

広いショッピングモールを抜けると、街の中心部を南北に走る大通りがある。先に行ってしまった杏子はまだ見つからないが、今日の探索ルートを考えるとこの大通りを南へ向かうはずだ。杏子のトレードマークとも言えるミントグリーンのパーカーと長い赤髪のポニーテールを探すが、ゆう子の視界にそれらしき人影は見当たらなかった。

(そんなに遠くまで行ってないと思うんだけどな……)

ゆう子がショッピングモールの中で立ち止まっていたのはほんの数分。人混みの中で見失ってしまうのは仕方ないが、この大通りまで出ても姿が見えないのは、もっと先まで行ってしまったのか。それともどこかで追い抜いてしまい、杏子はまだモールの中を探索しているのか。

携帯電話を使おうかとも思ったが、今日はふたりで行動する手筈だったので杏子の番号を聞いていなかったことに気付いた。

(困ったなぁ、ひとりじゃ何もできないし……ああ、私のバカ)

杏子の言葉に圧倒され置いて行かれてしまったことを悔やんだ。このまま先に進むかショッピングモールに戻るか思案をしていると、急に後ろから誰かの視線を感じた。

「杏子ちゃん?」

振り返って周りを見渡すが、大通りの歩道にも、ショッピングモールを出入りする人の中にも、杏子の姿は見当たらない。

(気のせいだったのかな)

この見滝原には杏子たち以外に知り合いはいないし、週末とはいえ六千石町の同級生らがこんなに遠くまで来ているとも考えにくい。ゆう子はあまり気にせず、ひとまずショッピングモールに戻ってみることにした。急いで追いかけてきたのに進む先に杏子が見えないのは、まだモール内を探索しているのか、途中で追い抜いてしまったのかもしれない。それにこのまま待ち合わせ場所の水上公園に戻っても時間はまだ早いし、今は少しでも早く杏子を見つけなければと思った。

そうしてショッピングモールに戻っていくゆう子を、大通りに架かる歩道橋から見下ろす人影があった。

 

ゆう子はショッピングモールの中に戻り、左右をキョロキョロしながら杏子を探して歩く。少し離れて、ゆう子の後を付いて来る人影があった。ゆう子が立ち止まって周りを見渡すとその人影も同じように立ち止まり、また歩き出せば同じように歩き出す。そうして視線の先にずっとゆう子を捉えたまま、近づくことも離れることもなく後ろを歩いてきた。初めのうちは気にならなかったが、徐々に突き刺さるような視線を背中に感じてきて

(やっぱり、誰かに見られてる?)

と後ろを振り返る。杏子が近くにいるのかと思ったがそうではなく、人混みの中からじっとゆう子を見つめる小さな少女がいた。10メートルほど離れたところから、明らかにゆう子だけを見て立ち止まっている幼い少女。行き交う人の流れの隙間から、お互いの目が合う。少女はすぐに体の向きを変えると、メイン通路から横に伸びる建物と建物の隙間の細い道へと入って行った。

(あんなに小さな子が、ひとりでどこに行くんだろう?)

少女が向かった先は従業員用の出入り口があるだけで、一般の客が通るような場所ではない。それに、家族連れが多い週末のショッピングモールとはいえ、小さな少女がひとりでいるのは変だった。

少女は出入り口の扉を開け、そのまま中に入ってしまった。

ゆう子は導かれるように後を追う。扉を開けると、薄暗い屋内には非常階段が設置されていて
タンタンタン
と少女が階段を上っていく足音が聞こえた。

階段は螺旋状になっていて、建物の上の方へ続いている。そこは窓も照明もなく非常灯の明かりがうっすら灯るだけで、まだ昼間だというのに外の賑やかなショッピングモールとはまるで別世界のような不気味さが感じられた。少女の姿は見えないが、足音だけがゆう子の頭上から聞こえてくる。

「なんか怖いなぁ」

ゆう子は両手を胸の前に合わせ、暗がりに怯えながら階段に足を踏み出した。

タン

タン

タン

ゆっくり、足元を確かめながら一段ずつ階段を上っていく。途中に踊り場のような場所もなく、ただ上の方へと螺旋状に続いていた。さらによく見ると、この階段には螺旋の中心に支柱がない。支えのない階段を歩くのは、まるで宙に浮いているような感覚だった。

ゆう子はぐるぐる回りながら上っていると、自分が今どれくらいの高さまで来たのかわからなくなってきた。それでも上の方からは、さっきの少女と思われる足音が聞こえてくる。

「おかしいな、どこまで上るんだろう」

この建物は3階建てのはずなのだが、もうそれ以上の高さまで来ているような気がした。入り口にあった非常灯の明かりも見えなくなり、周りは真っ暗だ。まるで道に迷ってしまったような不安に駆られていると、いつの間にか上から聞こえていた足音が途切れた。

気付いてゆう子も立ち止まる。

そこは音の無い、沈黙の空間。
耳が痛いほどの、静寂な螺旋階段。

外の世界と完全に隔離されたような暗闇と静けさの中、ゆう子は恐怖で叫びたくなる気持ちを抑えて、また足を踏み出した。

タン

タン

と、一歩ごとに響く自分の足音が今まで以上に不気味に鳴り渡る。

それからすぐに、ゆう子は足を止めた。永久に続くと思われた階段の頂上に、ようやく辿り着いたのだった。辿り着いたといっても、目の前には階段の最後に扉があるだけだった。踊り場もない、扉の周りに壁もない、長い長い螺旋階段の終わりは、ただ1枚の扉。その先には何もない。

扉の上には

【出口】

と書かれた案内灯が点いており、その薄明かりだけがぼんやりと扉を照らしている。

(ここに……入って行っちゃったのかな)

階段の終わりまで来たのにさっきの少女がいないので、きっとこの中にいるのだと思うしかなかった。あまりに不思議で不気味な状況にゆう子の鼓動は早く激しく、自分の身体が脈打つ感覚で自分自身が揺れているような気がした。なぜここまで少女を追いかけてきたのか、頭の中が混乱して考えがまとまらない。もはや後戻りも叶わない、そんな差し迫った恐怖感を抱きながらもゆう子は意を決して扉のノブを回し、冷たく重い扉を押し開けた。

 

続く

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