オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

魔法少女まどか☆マギカ 別編~再臨の物語~(2-2)

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―――かつて

ほむらが歩んだ時間軸のひとつ。円環の理がまだ存在しない世界で、ある魔法少女が絶望によりソウルジェムを限界まで濁し、魔女になってしまったことがあった。魔女は倒され、ほむらはそのグリーフシードを手に入れていた。グリーフシードを落としたのは魔女だが、それはもともと魔法少女のソウルジェムが姿を変えたもの。魔女になる前でもなった後でも、どちらも同じ物なのだと気づいたのだった。

この記憶を持つほむらは、自分たち以外にもどこかにいるかもしれない魔法少女を探すためにしばらく見滝原を離れていた。魔女が産まれなくなった世の中で他の魔法少女を探すのは容易ではなかったが、とある海沿いの街に訪れた時、偶然にもソウルジェムを限界まで濁している魔法少女に出会った。

少女が夜の浜辺でひとり、真っ黒に濁ってしまったソウルジェムを握りしめているところにほむらは通りかかった。夜の月に照らされながら波打ち際に座る少女のソウルジェムは、ひと目で限界に達しているとわかるほどに黒く穢れを放っていた。

「あなた、魔法少女ね」

「え?」

と振り返った少女は目の周りが薄黒く窪み、とても悲しげで、しかし自分の最期を悟っているかのように穏やかだった。

「そのソウルジェムはもう限界ね。あなた、ずっと魔力を使い続けてきたでしょう」

「よくわかるね。もしかして、君も魔法少女?」

ほむらよりも2つ3つは年上に見えるその少女は、取り乱すこともなく静かに答えた。

「ええ、そうよ。たまたま通りかかったのだけれど、残念ながら私にはあなたを助けることはできない。間もなくあなたは円環の理に導かれて消滅するわ」

「わかってるよ。グリーフシードが手に入らなくなったからね。友人の優里夏(ゆりか)も昨夜、逝ってしまったよ」

「友人の……魔法少女?」

「ああ、一緒にこの街を守ってきた仲間だった。昨日の夜、同じようにソウルジェムの穢れが溢れて、黒いドレスを着た魔女のようなものに消されてしまったよ。あれが円環の理なんだろう?」

この少女は、円環の理を目撃していた。しかもこの海辺の街には魔法少女がふたりもいたことにほむらは驚いた。そして今まさにこの魔法少女も、円環の理によって消滅しようとしている。それはとても憐れで救いようもないことだが、他人事ではなかった。ほむらも、マミや杏子も、グリーフシードが手に入らない世界ではいつ同じ運命となるかもわからない。

「わたしと優里夏は癒しの魔法が使えたからね、戦いのない世の中になってからは傷ついた人や動物たちを魔法で助けていたんだ。でも、どんなに癒しの魔法に長けていてもソウルジェムの穢れを浄化することはできなかった」

この少女は、魔法の力を人助けに使っていた。本来、魔法少女は魔女と戦いグリーフシードを得ることでソウルジェムを浄化する。だから普通はグリーフシードを手に入れるため以外に魔力を使うべきではないのだ。

「当たり前でしょう。あなた達はそんなことも知らずに魔法を使っていたの?」

「もちろん知っていたさ。でも、魔法はさ……、戦うためだけに使うものじゃないと思うんだ」

ほむらは言葉がなかった。なんて馬鹿なと思いながらも、自己の犠牲を顧みずに魔法の力を行使した結果、自らの滅びに直面してもそんなことを言えるこの少女にそれ以上の言葉が出てこなかった。

やがて少女は「うぐっ」と苦しそうに胸を押さえてその場に倒れ込み、星空を見上げた。

「もう……ずいぶん長いこと魔法少女をやってきたけど、わたしは間違っていなかったと思う。ここで終わってしまっても、自分のしてきたことに後悔はないよ」

自分に言い聞かせるように苦し気な声を振り絞ると、ソウルジェムは少女の手から離れ、ほむらの目の前で真っ黒な光を放射状に放った。魔法少女の魔力の源であるソウルジェムがグリーフシードへと姿を変え、魔女化が始まる。

「ゆう子、ごめんな。お姉ちゃんはもうだめだ」

少女は細い声で呟いた。

やがて明るい星空から月明りよりもまばゆい光明が差し、暗黒の魔女を救済すべく、天高くに黒いドレスの円環の理が訪れた。少女は光の粒に包まれ、ゆっくりと身体が透き通っていく。膨大な穢れにむしばまれた魔法少女は、その苦しみから解放され安息の世界へと導かれていくのだ。黒く濁ったグリーフシードからは今までに溜め込んだ穢れがモヤのように吸い出されていった。

ほむらは目の前にある真っ黒なグリーフシードを見つめた。これだけの穢れを溜めてしまうのに一体どれだけ癒しの魔法を使い続けてきたのか。この穢れの量には、少女が言っていた「魔法は戦うためだけに使うものじゃない」という意味がありありと込められている。

「こうして最期を看取るのも何かの縁かもしれないわね。あなたの名前を教えてもらえるかしら」

普段は他人に関心を持たないほむらが、今日まで見も知らない魔法少女に名前を尋ねた。

「わたしは、天生目……涼子(あまのめ りょうこ)」

最後に名前を告げた天生目涼子が、少し笑ったように見えた。ほむらはそっと手を伸ばし、まだ穢れの抜けきっていないグリーフシードを掴み懐に引き寄せると

「あなたのような魔法少女を、私はもうひとり知っているわ」

と言って、消えゆく少女に目を向け

「あなたの意思は無駄にはしない。このソウルジェムは預かっておくわよ」

グリーフシードではなく、ソウルジェムと呼んだ。魔女としてではなく、正しき魔法少女として消滅していく天生目涼子への敬意を込めて。

ほむらの頭の中に

(ありがとう)

という声が聞こえた気がした。

光の粒に包まれた少女の身体は、一瞬の眩しい閃光と共に姿を消した。魔法少女の救済は成され、天高く見下ろす黒いドレスの円環の理も夜空へと消えていったが、ほむらの手には黒く穢れを発するグリーフシードが残っていた。

見上げた空には月が美しく輝き、柔らかな海風がほむらの髪を揺らした。

 

続く

 

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