オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

魔法少女まどか☆マギカ 別編 再臨の物語(1-13)

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>>>魔法少女まどか☆マギカ 別編 再臨の物語(1-1)

 

雲間から差す光が消え
ぽっかり空いていた隙間が、渦が逆流するように元の厚い雲に戻る。

その一部始終を見守っていた杏子たちは皆、はっと我に返ったようにお互いを見回し
全員が無事であることを確認すると、杏子とマミは揃ってゆう子を見た。

ゆう子の姿は、紛れもない魔法少女だった。

どことなく杏子に似た格好なのは、本人の願いと関係しているのだろうか。
腰の後ろに付けた短槍も杏子に倣った武器なのだろうし、色のベースも赤を基調としている。
魔法少女として装着しているソウルジェムは、左耳のイヤリングに小さく納まっていた。

ゆう子はふたりから見つめられ

「あ、あの、私も杏子ちゃんたちと同じになっちゃったんだね」

と、少し恥ずかしそうに頬を掻いた。

ほむらから受け継いだグリーフシードは彼女の言う通りにソウルジェムへと転生し
ゆう子の魂の拠りどころとなった。
もう二度と普通の人間に戻ることのない、ソウルジェムの呪縛に囚われた存在。
その運命を受け入れる覚悟を持って
魔法の使者であるキュゥべえに願いを伝えたわけでないことは明白だ。
あの時は自分だけではなく、杏子たちの命までも天秤にかけた生死の選択だった。
だからキュゥべえに迫られてゆう子のとった決断は、初めから選択肢などない
レールの敷かれた一本道を突き進んでしまっただけだ。

ゆう子に後悔の念が見えないのは
これから待ち受ける魔法少女としての過酷な運命をまだ知らないからか。

ともかく、無事に魔女の結界を抜け出たことに安堵していると
ほむらだけが周囲の違和感に気付いた。

「おかしいわ。 時が、流れていないわよ」

時間を操る能力を持つほむらが気付いた違和感に続いて、今度はマミも

「人の気配が、いえ、生き物の気配がないわ」

まだ夕方前だというのに辺りは人や車の往来もなく、鳥や虫の気配すら感じられない。
それどころか、工場が吐き出していると思えた煙は固まっているように動いていなかった。
六千石町は音もなく静まり返っている。

これはほむらが、固有の能力であった時間操作の力を使っているわけではない。
彼女が時を操るのに必要とする左腕の盾は
先のグリーフシードの転生で使用した際に失ってしまっていた。
それに時間が止まった世界で、杏子たちだけが動けるのはどういうことか。

「何か、嫌な予感がするわね」

マミの髪飾りにあるソウルジェムが強い光を放つ。
杏子の胸元の赤い宝珠も、ほむらの手の甲にある紫の宝珠も、うっすら発光し始めた。

「これは、魔女がいるのか?」

杏子の素直な問いかけに

「まさか・・・。さっきのは多分、円環の理。 魔女の結界はすべて消滅した、はずよ」

マミは空を見上げて答えるが
ソウルジェムには魔女や魔女の結界に反応して発光する索敵機能がある。
杏子たちは警戒しながら、ゆう子を背に囲うようにゆっくりと集まりだした。
工場の塀の影、バス停の奥の茂み、道路の先に目を向けるが、誰もいない、何もいない。
杏子、マミ、ほむら、3人の足音だけがコツ・・・コツ・・・と、静かに響き渡る。
杏子の足が路面の水たまりを踏み込むと、雨水という液体は杏子の靴を吸い込むことなく
まるで固い床のように乗り上げた。
時が止まっているというよりは、時が固まっているかのようだった。

「杏子ちゃん」

ゆう子が不安を吐き出すように声を漏らすと
空を覆う厚い雲が渦を巻き、螺旋のように下に伸びてきた。

ブワッと突風が吹き、杏子たちは思わず目を閉じる。

肌を刺す程の強い突風は一瞬で散り消え

そして暗い瞼を幕開けた目の前には・・・

見たこともないような巨獣が現れた。

その姿は象ほどもありそうな巨大な獅子で
紅い顔、鋭い牙、四肢の先に大きな爪、固く尖った鋭利な尾
体毛は無く全身は白と赤紫色のまだら模様をしている。
後頚部には金色の装甲板のような放射状の鬣(たてがみ)があり
両肩からは鱗に覆われた竜のような頭が2本生えている化け物だった。

鬣の中央には赤と緑の幾何学的な文様が刻まれている。

「あの文様は・・・」

杏子には見覚えがあった。

「無花果の魔女のマークだ!」

ゆう子の学校がイチジクに覆われた時に
生徒や教師たちの首筋にあった魔女の口づけのマークと同じだった。

「魔女? これが無花果の魔女?」

ソウルジェムの発光もあり、この世の生き物ではない巨獣を前に魔女が現れたと思った杏子だが
キュゥべえの考えは違った。

「いや、違うね。さっきの円環の理で魔女は存在できない。
でもあのマークが無花果の魔女を現すものなら、こいつはさっきの魔女の魂が実体化した生物だ」

円環の理によって消滅したと思われた魔女の魂は

「魔女ではなく、自我なき獣へと堕ちた魔女の成れの果て、魔獣とでも呼ぶべき存在だね」

巨大な獅子は凄まじい咆哮をあげた。
咆哮の響きで大気は揺れ、杏子たちの身体の中にまで振動が伝わってくる。

「魔・・・獣?」

「そう。本来、魔女というのは魔力を持った意思のある存在だけど
恐らくあれは生き残るために魔力と意思を捨て肉体だけをこの世に留めた獣。
消滅を免れ、円環の理を歪めてまで存在しようとする執念で生まれた、魔女の変わり果てた姿だ」

魔獣は薄青く光る目で杏子たちを睨み
太い四肢で地面を蹴ると、杏子たちに向かって飛び込んできた。
その巨体に似つかない素早い動きで、大きな爪を振り下ろす。
杏子はゆう子の手を引き空中へ逃れ、マミとほむらも飛び退き身を躱した。
空を切った大きな爪は、ガキーンという金属音のような甲高い音を立てて地面に当たるが
地面には傷ひとつ付いていない。
時間が固まっていることにより物質も固定され傷が付かないようだった。

「自我を捨て、魔力と意思を放棄して残るのは、敵を攻撃する本能のみ、ということね」

マミは宙高く舞い上がると黄色いリボンを長く伸ばし魔獣の首筋に巻き付け
蜘蛛の巣を張り巡らすように、その巨大な体を拘束した。
マミはマスケット銃による銃撃を主な攻撃手段にしているが
魔法少女としての彼女の能力は伸縮自在なリボンによる拘束魔法だ。
強力な拘束能力があるリボンを張り巡らせ、魔獣の動きを止めた。
魔獣は激しく抵抗しリボンを振り払おうとする。

「無駄よ、そのリボンは魔力による拘束術。 物理的に打ち破れるものではないわ」

しかし魔獣は太い前足をリボンに掛けると
凄まじい雄叫びと共にリボンをぐしゃぐしゃに引き千切った。
千切れたリボンは力なく垂れ落ち、魔獣の拘束が解かれる。

「な、なんて力なの。 私の魔法を打ち破るなんて」

地面に着地したマミに向かって魔獣が突進し
マミが身構えるより早く、前足の大きな爪が振り下ろされる。
が、さらに一瞬早く杏子が間に割って入り、槍でその攻撃を受け止める。
受け止めはしたが、あまりに力のある一撃に杏子はマミの身体と一緒に弾き飛ばされてしまった。

 

続く

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