オリジナル小説 魔法少女まどか☆マギカ

魔法少女まどか☆マギカ 別編 再臨の物語(1-5)

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再臨ロゴ2

 

 

どれくらいの時間を眠っていたのか。夢を見ていた気がするが
何を見ていたのか、いや、夢を見ていたかどうかすら覚えていない。

陽が高く上がった頃、急にソウルジェムが熱を帯び、強い光を放ち
杏子はハッと目を覚ました。
目を開けた瞬間に杏子の周り、というか学校全体の空間に異変を感じ飛び起きる。

「来た!」

周囲の温度が一気に冷え、赤紫色の霧が包み、今度は学校の敷地全体に太い茎が生い茂る。
校舎の壁面はイチジクの茎で覆われ、そこから大きな葉が無数に垂れてきた。

昨夜と同じく魔女の結界が発動し、杏子はまたしても引きずり込まれたのだ。

ただ昨夜と違うのは、結界の規模だ。

昨夜はせいぜい十数メートル程度の結界だったが
今回は学校の校舎全体と敷地すべてが結界と化している。
赤紫色の霧で敷地の外は見えず、まるでイチジクのジャングルのようだった。
校舎や敷地を覆う葉の隙間から、暗い目を付けたイチジクの使い魔が何匹も何匹も
一面に暗い目を開けてきた。数百もの暗い目が・・・

ギョロっと一斉に杏子を見る。

杏子は戦慄した。

到底、一度に相手にできる数ではない。

しかし相手の数も大変なものだが、ゆう子のことが気になる。
校舎に張り付く茎や葉で屋内が見えないが、ゆう子や他の生徒たちはどうなっているのか。
それに結界が発動し使い魔が大量に現れたということは
ゆう子の身に何か起こっているのではないか。

杏子は茎と葉の隙間から校舎の窓ガラスを割り、そこから校内に入った。

杏子の動きを見て、イチジクの使い魔たちも茎を離れ窓から校内に入ってくる。
何十匹も何百匹も、後から後からイチジクは追いかけてきた。

(ゆう子は2年生だ、2年の教室はどこだ?)

杏子は校舎の4階から廊下を走り、階段を下りながら2年の教室を探す。
校舎の中は壁も窓も廊下もイチジクの茎と葉で覆われているが
幸いなことに屋内には実が無いようでイチジクは後ろから追いかけてくるだけだった。

「あった、2年!」

2階の廊下に出たところで2年の教室を見つけ、一番手前にあった教室に飛び込むと
中は異様な光景だった。

生徒も教師も皆、窓の方へ集まり両手を高く掲げ
何かを仰ぎ待っているように立っている。
目は生気を失い、口は半開き、チラっと見えた首筋には赤と緑の幾何学的な文様が刻されていた。

「あの文様は、魔女の口づけ?」

そこへすぐに、教室内に使い魔たちが雪崩れ込んでくる。
数十数百ものイチジクが、後から後から押し寄せてきた。

杏子は槍で薙ぎ払おうとするが、イチジクは目を閉じて姿を消すので手応えがない。

「くそっ」

杏子は昨夜と同じように槍を多節棍のように分断し
自分自身の四方をまるで繭のように巻き打ちながらイチジクを防ぐ。
まばたきで消えるイチジクと、現れるイチジクとが入り乱れ
数匹が多節棍の巻き打ちに弾かれて萎んでいくが

「これじゃダメだ、キリがない」

数が多すぎる。

教室内には、廊下から侵入するイチジクが増える一方だ。
杏子は迫りくる無数のイチジクを前に防戦一方で、ゆう子がこのクラスにいるのか探す余裕もない。
周りのイチジクの数がどんどん増えていく。

(このままじゃマズイ、あたしの力が持たない)

多節棍の巻き打ちに力を振り絞り、なんとか教室の外に出ようとドアに近づいた時

『そこを動かないで!』

と頭の中に声が聞こえた次の瞬間

「ティロ・フィナーレ!」

爆音が轟き、廊下いっぱいに閃光が走る。
廊下にいたイチジクの使い魔たちは、その閃光爆裂によってすべて消し飛んでしまった。

「マミ! 助かったぜ」

廊下の奥から強力な砲撃を放ったのはマミだった。

『間に合ったみたいね』

マミの声がテレパシーで杏子の頭の中に届く。
魔法少女同士は、ある程度の距離内ならテレパシーで会話ができる。

「ああ、危なかったよ。 それより早くゆう子を探してくれ、こっちのクラスにはいないみたいだ」

杏子は教室内に残ったイチジクを片付けながら叫んだ。

さっきのマミの一撃で廊下のイチジクは消し飛んだが
外にいた数を考えるとまたすぐに新手が来るだろう。

『いたわ、こっちよ』

隣の教室に入ってすぐ、マミが立っていた。その先には

教室の真ん中で立ったまま両手を前に出し、その掌には黒く光る珠を抱える少女
天生目ゆう子がいた。
そして、ゆう子の掌に乗る黒い珠

あれは

「グリーフシードだ!」

グリーフシードの中心部分は暗く、どこまでも暗く
一体どれだけの憎しみや呪いを溜めているのか、パチパチと黒い静電気のようなものを帯びている。

「佐倉さん、使い魔が来るわよ!」

杏子が廊下を覗くと、またしても無数のイチジクがこちらへ向かってくる。
他の教室にいる生徒や教師には構わずに杏子とマミだけを狙ってきた。

「そうか、あいつらにとってはあたしたちだけが敵なんだ」

杏子は片膝をつき、両手を合わせ目を閉じて祈りの姿勢をとると
赤い菱形の文様をいくつも繋げた結界を作り出した。

結界は教室内に杏子とマミ、そしてゆう子を囲む直方体を形成し
その外にいるイチジクたちは結界から中に入れなくなった。

イチジクの使い魔は浮遊しながらどんどん杏子の結界を覆ってくるが、まばたきをしようとしない。

「あいつら、こっちから攻撃をしないかぎりはまばたきで瞬間移動しないのか?」

「それより、ゆう子!」

杏子はグリーフシードを掲げるゆう子に近づき名前を呼ぶ。
ゆう子は目を開けているが、瞳は黒く濁り、視線が合わず、心ここにあらずといった感じだった。

「おいマミ、これはどういうことなんだよ?」

杏子は振り返り、後ろにいるマミに向かって叫ぶ。
グリーフシードを抱えて放心状態のゆう子を前に、どうしていいかわからなかった。

 

続く

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